大きな悲しみや困難に出合ったとき、
あなたは誰にならその胸の内を打ち明けられるだろうか。
家族や友人…多くの人がそう答えるだろう。
それなら、もし、あなたが「がん」という恐ろしい病に冒され、
家族や友人ですらあなたの苦しみを支えられなくなったとき、
あなたはその苦しみをどこにぶつけるだろうか。
―――その受け皿となるべく、電話を通して、
がん患者や、その家族の話に耳を傾ける人々がいる。
名古屋市内に事務所を置くボランティアグループ
「がん心のケアほっとライン」だ。
去年の5月から始まったその活動について
代表の毛利 祐子さんに話を伺った。



 どのような活動をされているのか教えてください。

がんの患者さんや、そのご家族、患者さんのケアを担当する方のお話を電話でお聴きする活動です。公的機関で長期間電話相談の経験がある8人の会員と、会員の活動をバックアップする3人の臨床心理士の計11人によって運営しています。私たちは会員を、相談員などという堅苦しい言葉は使わず「聴き手」と呼んでいますが、それは、この活動が必ずしも相談ではなく、患者さんの思いを、電話を通して存分にお話いだたくことを目的としているからです。


 どんな内容の電話が多いのですか?


電話を掛けてくださるのは、患者さんご自身やご家族の方がほとんどです。患者さんからの電話の内容は、「体が痛くて苦しい」「治療がつらい」「自分が今まで生きてきたことに、どんな意味があるだろう」「自分の死んだ後、家族はどうなるのだろう」などさまざまです。そうしたやりきれない気持ちを聴き手にぶつけるうちに、患者さん自身、自分の気持ちに整理がついてくるんですね。人間が前向きになるためには、散々後ろ向きの話をすることが必要ですし、それを誰かに話すということは、自分自身の内面を見つめる手助けにもなります。

私たちは患者さんの心に寄りそって、ありのままを受け止め、苦しみや辛さを充分に分かちあえるように、と思いながら耳を傾けています。



 自分の気持ちを正直に吐き出すのは 非常に勇気の要ることだと思いますが。

そうですね。だから、私たちは、患者さんのお名前、肩書き、住所、年齢は一切伺いません。患者さんのほうからおっしゃることはあっても、こちらはあくまで匿名を守っています。人は自分の内面を知っている人とは、出会いたくはないものです。逆に自分の素性を知らない人にだからこそ、自分のすべてをさらけだせる、本音で話せるという面もあります。また、電話のいいところは、患者さん本人が話したいと思うときに、話しができる点ですね。それに、声には感情がこもりますから、こちらの真剣さが患者さんにも伝わりやすいと思います。



 





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