2002年8月号 |
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BORAMIMI SPECIAL |
かつては、近所の子どもたちを遠慮なく叱り飛ばす誉れ高き「がんこおやじ」。時代が移れば、会社でも家庭でも「濡れ落ち葉」「粗大ゴミ」の不名誉な言葉をかぶせられるやっかいものに。名古屋の新しいベッドタウンとして若い文化を築く愛知郡長久手町には、がんこおやじ“凋落”のご時世などクソ食らえとばかりに立ち上がった頼もしい男性たちがいる。ボランティア団体の「がんこおやじの会」だ。女性専科とも言われるボランティア活動を通して、おやじ復権を思わせる、まさに“がんこおやじぶり”を発揮している。 |
「よいしょ、よいしょ」 とある休日の名古屋市内の某私立高校。多くの家族連れや若者たちが集うイベント会場の一角では、餅つきのリズムにあわせて、威勢の良い掛け声が響く。石うすと杵(きね)をあうんの呼吸で操るのは、長久手町「がんこおやじの会」の餅つき隊。すぐそばには、会ののぼりが6本たなびいている。 祭りシーズンの秋から春にかけて、活動のメインは自前の杵と臼を持参してのこの餅つき。東海豪雨の時には、炊き出しで100キロの餅をついたことも。普段は、もっぱらお膝元の長久手周辺での活動だが、それ以外の依頼でも「これは楽しいぞ!」という予感があれば、出張もいとわない。 餅つきが始まって数分、周囲には次第に子どもや高校生たちの人だかりが。餅つき隊から手渡された杵を、子どもたちがかわるがわる振り下ろす。「いいぞ、その調子」「そうじゃない、こうやるんだ」。こわもてのおじさん達に威勢のいい声を掛けられると、危なっかしい手元もさまになってくる。次は、つきあがったお餅を丸める番。「ほら、やってみい」と、餅つき隊に促されて一人の高校生があつあつの餅を丸める。それにつられて子ども連れのお母さんも、女子高生も、若いカップルも自分の手で餅を丸めはじめる。ステンレスのバットには、きな粉、小豆あん、それに大根おろし。自分で丸めた餅をその中に浸して、いざ自分の口へ。あとは「美味しい」の大合唱だ。もちろん、餅つき隊のおじさんたちも子どもに負けじと、自分で丸めた餅を頬ばる。おじさんたちは、決してホスト役ではない。こっち側もそっち側もない、見ている者を餅つきの輪に巻き込むのが一番の目的だ。 「とにかく気に入ったことしかしない。小言が多い。お酒が大好き。僕らは、むかし町内に必ず一人はいて、子どもを叱り飛ばしていた、あのがんこおやじを目指しているんです。」 もちつき隊の脇で、「がんこおやじの会」の若きリーダー伊藤敬一さんは、涼しげな表情でそう話す。 |
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