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特集



インタビュー 浅井 久美さん (環境カウンセラー・もっともっと環境塾2000代表)

「暮らしと環境のかかわりに気づく。環境にやさしい取り組みをひとつ始める。
そのきっかけをつくるスタートラインを引きたい。」
ある環境セミナーの講師として、
浅井さんは40人の受講者にこう呼びかける。
「地球にやさしい取り組みが10個あったら、
10個全部実践しようとするのは大変。
でも40人ができることを1個ずつやれば、40個になる。
一人ひとりの小さな積み重ねが大きな力になります」。
環境のために、あれもこれも駄目、
こうすべきと大上段にふりかざすのではなく、
肩の力を抜いて「身近にできることを自分流に」
がモットー。
10年前、「環境保護はゴミ減らしから」と
台所から始めた取り組みは次第に
活動のフィールドを広げ、
現在仲間と環境教育の出前授業で小学校へ。
これまでの活動とその思いについて話をうかがった。

一番身近な環境への取り組み。ゴミにこだわる生活から見えてきたもの
 ダメダメ日記

「カンちゃんのダメダメ日記」には等身大の小学生のエピソードをたくさん盛り込んだ。シナリオは、みんなで意見を出し合い時間をかけて練り上げた。絵を描いたのは浅井さん(左)。「メンバーにプロのイラストレーターもいたんですが、素人っぽい私の絵がかえって親しみやすいということになって」。

_ 環境問題に関心を持ったきっかけを教えてください。

 最初は地球温暖化やオゾン層の破壊、資源の枯渇など環境問題を地球規模の大きな問題として捉えていました。でもそういった環境の変化は、今の私たちの身近な生活が深く関わっている。自分が子どもを生んで、子どもたちの生きる未来が間近に感じられて、未来の地球の姿に危機感を抱いた。母親として何かしなければと。じゃあ何ができるかと考えた時、それが一番身近なゴミ問題でした。
 ゴミを減らすために何をしようと思ったとき頭に浮かんだのが、私が子どもの頃の生活、母がしていたような生活でした。買い物にはかごを持っていたし、私が失敗した習字の半紙なんかでフライパンを拭いていたり。生活の中に環境にやさしい取り組みが何気なくあった。私も買い物袋を持ったり、当時、地域では年に数回しか回収していなかった牛乳パックを車で資源回収の場に持ち込んだりと行動に移しました。

_ 10年前と言えばまだ地域で資源ゴミの回収をしていない頃ですね。

 1991年に、中部リサイクル運動市民の会が資源回収のスポットとしてリサイクルステーションを立ち上げました。当時リサイクルの最前線。私も市民リサイクラーとして活動に関わりました。近所の友だちに「何曜日の何時までに私の家に資源ゴミを置いてくれたらリサイクルステーションに持っていくから」と声をかけました。そのうち5軒が10軒、15軒と増えていって。ああみんな意識はあるんだなと。私一人の呼びかけでゴミは確実に減っている。受け皿さえあれば、みんなそういう行動をとるんだな思いましたね。
 ごみにこだわる生活を続ける中で、何のゴミを減らせばいいかを知らないと次の行動に移せないと、家族4人が出すごみの量を一年間量りました。台所に専用のはかりを置いて、生ゴミ、紙くず、プラスチック類など26種類に分けた。最初にわかったのは生ゴミが可燃ゴミの7割を占めていること。ベランダでできるコンポストで肥料にしたら半分になりました。またプラスチック類は生協で協同購入して減らし、ペットボトルも避けた。全体のごみの量は1ヵ月平均で50キロから10キロ減りました。個人の努力や心がけは確実に成果に結びつく。と同時に、受け皿をつくる企業などの努力も必要。それぞれの努力でゴミは減らせることを実感しました。

授業風景 授業風景。「ごはんを残しちゃ〜?」と呼びかけると、生徒たちは大きな声で
「ダメダメ!」。テレビタレントの物まねの掛け合いで場が盛り上がる。

答えを与えるのではなく、気づく・考えるきっかけをつくる。それが「もっともっと環境塾」の環境教育

_ ゴミ減量の地道な取り組みから組織的な活動へ。そのきっかけがなごや環境塾(*)ですね。

 私の思い、やりたいことを伝えたい。でもどうしたらいいんだろうと思っていたときに環境塾の受講者募集のパンフレットを見て、「今まで環境問題に関わってきたけど、何をしたらいいかわからない人」などいくつか書いてあって、あ〜それ私だ、私だ!と即参加を決めました。参加者は、会社員、主婦、学生、教師とさまざま。年齢、職業、価値観も違うから、話し合いでも意見はばらばら。主婦と企業の人では話す言葉自体違う。でもみんながわかりあえる言葉に変えながら話し合っていく積み重ねが楽しくて。意見をまとめる手法、やりとりなど勉強になり、とても貴重な場でしたね。講座が修了して、このまま終わるのはもったいない、この多様な人材を地域で生かさないと意味がない、そんな思いから修了生36人が集まって、もっともっと環境塾2000をつくりました。

_ もっともっと環境塾2000の活動について教えてください。

  テーマを決めてじっくり時間をかけて取り組む「お題企画」と、メンバー各々が自由に企画する「この指とまれ!企画」の二本立てで活動を始めました。「お題企画」のテーマはアンケートで環境教育と決まり、グループに分かれて企画を出し合い、コンペを行ってプログラムを決定しました。それが手づくりの紙芝居「カンちゃんのダメダメ日記」を使った小学校への出前授業です。自分たちの生活のどこと環境が関わっているのかを気づく、考えるきっかけをつくるというのが目的です。
 紙芝居の対象は、授業で環境問題の勉強を始める小学4年生。主人公のカンちゃんも4年生に設定、彼の一日の生活を描いています。カンちゃんは、朝食をほとんど残して登校。放課後、駄菓子屋さんでお菓子を買って公園でポイ捨て。使いかけのノートや鉛筆もあきたからと新しいものに。みんな心当たりあるでしょうという内容。紙芝居を見ながら「朝ごはん残すとどうなる?」「ゴミをポイ捨てするとどうなる?」「分別するのはどうして?」などやりとりを交わす中で考えてもらう。また授業だけで終わらせたくはないので、チェックシートを持ち帰り、家族で話し合ってもらうよう提案しています。


_ 教育の現場に関わることについて心がけていることはありますか。

 イベント的なものとして学校とつながりは持ちたくないと思っています。だから事前の打ち合わせは大切にしています。生徒たちが今までどんな学習をしてきたか、私たちがやれること、学校がやってほしいことは何か、意見交換をきちんとするよう努めています。  
 私たちのようなおじさんおばさんが学校へ来て話すことは、子どもたちには新鮮だと思うんです。答えを与えたり、押し付けるのではなく、子どもと同じ目線で一緒に考えられる時間にしたい。それが私たちの共通の願いですね。
 そしてせっかく出会って45分の授業を一緒に過ごすなら、いい影響を与えたいと心がけています。例えば、道端に花が咲いていたとして、何も言わずに素通りしていく親子と、あっ花が咲いてるねと通っていく親子と、かわいい赤い花が楽しそうに咲いてるねと通っていく親子がいたら、それぞれの子どもの感性は違ってくる、その差は大きいと思うんですね。私自身、少しでも子どもたちの感性を目覚めさせるような言葉をかけていきたい。

授業の目玉 授業の目玉。子どもたちに紙芝居に出てくるだんご虫を体験してもらう。10円のガムを見せて「これを食べて地面に捨てたら、そこにいるダンゴ虫はどんな思いがするか生き物の気持ちになってみましょう!」と言うと、ガムに見立てた巨大な布が子どもたちの上に。



環境カウンセラーとして発信するメッセージ

_ 環境カウンセラー(*)としても活動されています。どのようなことを伝えていますか。

 私の話を聞いて、環境問題を身近にとらえてもらえればいいなと。講座で皆さんに話すとしたら、たまには私もレジ袋もらいますとか(笑)。罪悪感なくもらう一枚と今日は自分の袋を忘れて申し訳ないなともらう一枚は意味が違う。絶対にもらっちゃいけませんとは言いたくないんです。毎回レジ袋をもらっていた人が、今日はマイバッグを持っていったら、それは大きな一歩ですよね。行動するきっけかになるスタートラインを引けたらいいかなと思っています。こうしましょうと言われてそのままやるのは、私自身疲れるんですね。自分流のやり方に変えることが長続きの秘訣だとお話ししています。


_ 気負わず、できることから始めようということですね。

 そうですね。環境問題を難しく考えることはないんですが、でもある意味危機感を持たないと、正面から向き合うことができないんじゃないか、行動に移せないんじゃないかとは思います。他人事、よそ事と思わずに、世界や日本で起きていることに目を向け、自分に関わる問題としてとらえてほしいですね。


豆知識
レジ袋は、ポリエチレンやポリプロピレンといったプラスチックからできています。そしてプラスチックは石油から。つまりレジ袋は石油からできているのです。名古屋市内では年間1万トン(推定)のレジ袋が使われています。プラスチック1万トンは、石油2万トン(原料1万トン、燃料1万トン)でできています。レジ袋を半減(5千トン)させると、年間1万トンの石油が節約できます。これは、13,000世帯の1年分の電力に相当します。名古屋市では「脱レジ袋宣言」を発表、減らそうレジ袋!守ろう地球環境をキャッチフレーズに、市内スーパー、コンビニなどでキャンペーンを展開しています。
 


各団体の詳しい情報
<連絡先>  
浅井久美  
TEL&FAX : 052ー694ー2535
E-mail : ka0528@k4.dion.ne.jp
もっともっと環境塾2000 
渉外担当 : 柴垣
E-mail : t-shibagaki@k4.dion.ne.jp


*なごや環境塾
名古屋市環境局主催で、平成12年度より始められた市民講座。市民の環境保全活動の中心的役割を担う人材の育成を目的に開かれている。
* 環境カウンセラー
環境保全に関する専門的知識や豊富な経験を有し、その知見や経験に基づき市民やNGO、事業者などの環境保全活動に対する助言など(=環境カウンセリング)を行う人材として、環境省の行う審査を経て登録される。


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