特集 みんなの夢を
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−空き店舗を利用したユニークな店をオープン 「雁ぶら物語」−
瑞穂区の雁道(がんみち)商店街に、にぎわいを呼び戻そうと、空き店舗を活用した一風変わったショップとサロンがオープンした。誰もが店のオーナーになれる「雁ぶらショップ」と、日替わりでさまざまな教室や会合が開かれる「雁ぶらサロン」だ。周辺住民でつくる「雁ぶら物語」のメンバーが、商店街の活性化、そして地域の人たちの夢の実現を目指している。
偶然の連続で始まった雁ぶらの「物語」
 昔懐かしい商店街のある街「雁道」。昭和30年代、その店舗数は118とにぎわいをみせていたが、その後減少を続け、現在開いているのは53店舗。日中でもシャッターが下りたままの店が目立つようになってきた。商店主の高齢化などでなかなか活性化に取り組めずにいたこの雁道商店街の再生に乗り出したのは、同じ瑞穂区で活躍する人たちだった。2004年2月、雁道商店街振興組合が発行した冊子から名前を取って、「雁ぶら物語」というグループが結成された。雁ぶらソングは吉川さんの手作り。雁ぶらショップ(左)と雁ぶらサロン(右)。どちらもバリアフリーが行き届いた造り。 
 「『雁ぶら物語』が誕生するまでの過程には、さまざまな偶然があった」と話すのは、「雁ぶら物語」の発案者で、現在事務局長を務める吉川冨士子さん。2003年4月、愛知県議選の名古屋市瑞穂区選挙区に出馬した吉川さんは、「あなたのまちにもえんがわを」という公約を掲げ、雁道商店街を練り歩いた。「えんがわ」とは、吉川さんが7年前に自宅で始めた、宅老所「瑞穂デイセンターえんがわ」のことだ。家にこもりがちだったり、心身に障害のあるお年寄りたちのお世話をするデイサービスや、みんなで手作り品を作る工房を開くほか、パソコン、囲碁、麻雀、カラオケなどの同好会を定期的に行い、地域のお年寄りたちのオアシスのような場所になっている。義母の介護に悩み、家族が壊れかけた経験をもつ吉川さんが、「仲間と楽しく介護がしたい」という思いから始めた活動だ。
 吉川さんは、選挙戦終盤に雁道商店街で選挙活動をして驚いた。「にぎやかな所」と予想していたのに、歩いている人を見かけなかったのだ。なかには、家で介護をしていて、人の気配がすると店に出てくるという店主もいた。同じ瑞穂区に住んでいながらこのとき初めて雁道に来た吉川さんは、「こういう所にこそえんがわがあれば」「街のにぎわいを取り戻すために、役に立ちたい」という思いを抱いたという。
 折りしも雁道商店街は2003年5月、商店街の活性化に取り組む住民を支援する愛知県の「コミュニティービジネス」のモデル地区に選ばれていた。そして9月、知人から「雁道でおもしろいワークショップをやっている」との情報を聞き、「雁道」という地名に吉川さんは目を輝かせた。「雁道に何があったら活性化すると思いますか」というワークショップでの問いに、えんがわでやっていることを次々と提案。住民参加の一例として愛知県は吉川さんの計画に注目し、どれだけ人が集まるか実験することになった。
 商店街側からなかなか理解が得られないという問題にぶつかりながらも、吉川さんの熱意は周囲にも伝わった。「『えんがわ』だけでは商店街のシャッターを開けることはできないかもしれないけれど、みんなの力が集まれば」との呼び掛けに、仲間や市民団体などから協力者が現れた。2004年2月、様々なグループが集まって、雁道の商店街の事務所や空き店舗を使ったイベントを開催。このとき出会った仲間9名で「雁ぶら物語」の実行委員会を結成し、「雁ぶら物語」が本格稼動した。「商店街の懐かしい雰囲気に惹かれ、とにかく話して、呼び掛けました」と、吉川さんは笑顔で振り返る。

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