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(N)あいち骨髄バンクを支援する会 さらなるステップに向けて
患者とドナーの「命」をつなぐために
日本では、白血病などの重い血液の病気にかかる人は毎年6千人、そのうち2千人が治療に有効と言われる“骨髄移植”のドナー(骨髄提供者)を探している。こうした患者とドナーとをつなぐ役割を担う骨髄バンクは、国の主導の下、(財)骨髄移植推進財団が主体となり、日本赤十字社および都道府県の協力によって運営される公的事業だが、その登録業務やドナー拡大のためのPR活動は全国で活動する民間のボランティア団体によるところが大きい。名古屋には、こうした活動の草分け的存在として二つの団体があったが、この4月からは二つが一つのNPO団体として統合し、新たなスタートを切った。この地域のドナー登録の拡大や患者の支援に取り組む「特定非営利活動法人 あいち骨髄バンクを支援する会」事務局長・理事の水谷さんに話をうかがった。
週末イベントでドナー登録をPR。

 「ドナー登録のPRはわたしたちの活動の大きな要。週末のイベントは大きなチャンスですから、今日みたいなイベントや万博、絵画展、たくさんの人が集まるところなら、どこへでも出かけていきますよ」 
 そう言ってにっこり微笑むのは「あいち骨髄バンクを支援する会(以下あいちの会)」の事務局長で理事の水谷久美さん。とある日曜日、名古屋市北区の名城公園で行われた「ウォーカソン」というチャリティイベントには、あいにくの雨模様にもかかわらず園内コースのウォーキングに参加する人でごった返していた。そんな中、平成9年からこのチャリティイベントの寄付を受けている縁で毎年会場の一角にブースを設けている「あいちの会」は、この日10人あまりのボランティアが集結。10時のイベント開始の合図とともに、PR用ののぼりを掲げ元気よくウォーキングに出発していった。
 その間一人お留守番の水谷さんは、ブースの前に足を止めてパンフレットを手に取る人たちにティッシュを渡し、質問をする人には丁寧に答え、またドナー登録会に絡む新たなイベント企画が持ち込まれればその打ち合わせにも余念がない。さらに家族に骨髄移植を控えている人がたまたまブースに立ち寄れば真っ先にその話に耳を傾けている。たった1時間あまりの間にも目の回るような忙しさだ。「わたしたちは、骨髄バンクに関する情報の発信や広報活動やドナー登録会も開催しますが、今みたいに患者さんや家族の方たちの辛い気持ちを聞くことも大事な活動なんですよ」と、水谷さんは疲れも見せずにそう語る。

前身の二つの団体の取り組み。

前身の二つの団体の取り組み。  「あいちの会」の事業は、各種イベントやシンポジウムなどを利用したPR活動と献血センターや行政などと連携して行うドナー登録会の開催が大きな柱だ。「あいちの会」の前身である二団体の一つ「骨髄バンクを支援する 愛知の会」が主に担っていた部分で、現在も年間100件にも及ぶドナー登録会に参加している。  ドナー登録会では、専門スタッフによる説明、ドナーを希望するかどうかの意思確認、そして白血球の型(HLA型)を登録するための採血が行われる。現在、「あいちの会」企画のドナー登録会の主流は、献血バスとともにさまざまな会場に出かけて行う献血併行型と呼ばれるスタイルだ。採血やデーターセンターへの登録は献血業務に従事している日赤の医師やスタッフが行い、説明の部分は行政職員や「あいちの会」のボランティアスタッフなどが担う。こうした登録会は今から3年前、日本骨髄バンクの主体をなす骨髄移植推進財団が説明員を委嘱し、ボランティア団体主催の登録会が行えるようになってから盛んになった。一度に献血とドナー登録の二つの事業が展開でき、スタッフも兼務できることが大きな魅力だ。約15人の説明員が所属している「あいちの会」では、登録会が行えるような機会や情報を得ると、献血センターと連絡を取り合い登録会の予定を次々と入れていく。  「あいちの会」の活動のもう一つの大きな柱は患者支援。会のもう一方の前身「愛知県長期滞在患者を支援する はなのきの会」が担ってきたもので、事務局長の水谷さんはここの事務局長をしてきた。アメリカで患者家族のために宿泊施設の提供をしている「マクドナルドハウス」の取り組みを参考に、平成9年、遠方からこの地で治療を受ける患者や家族のための宿泊施設「はなのきハウス」が名古屋市内に3施設9部屋設置された。家財道具一式がそろった部屋を安価に提供するだけでなく、茶話会、食事会などを開催し、不安や辛さを抱える患者や家族の訴えを聞いたり当事者同士の交流を支える活動にも取り組んできた。水谷さんは言う。「当事者の方たちに心理的な負担は掛けたくないから、茶話会などの出欠確認は一切とらないんです。だから、参加者が少なくて用意したケーキを全部一人で食べたなんてこともありました(笑)。でも、それでいいんです。気が向いた時に来てくだされば。わたしたちはそこを大事にしたいんです」。  これまでに「はなのきハウス」を利用したのは180家族、設立以来今も変わらず多くの患者や家族の心の居場所になっている。
雨の中で行われたチャリティイベント「ウォーカソン」
雨の中で行われたチャリティイベント「ウォーカソン」

ボランティアのみなさん 会報第一号の発送作業
−−−− ボランティアのみなさん −−−− 会報第一号の発送作業


NPO法人としてさらなる飛躍を。

 ウォーキングイベントから一時間が経過。額に汗をにじませたボランティアの人たちが次々にブースに戻ってきて、今度は早速PR用のパンフレットやティッシュ配りに加わる。現在「あいちの会」のボランティアは約50人。患者の家族や友人、ドクターなどの医療関係者のほか、実際に骨髄移植を受けたことのある若い女性などもいる。  事務局長の水谷さんも、やはりお父さんを白血病で亡くしたことをきっかけに活動にかかわるようになった。日本骨髄バンク設立以前のことで、かれこれ10年以上が過ぎた。「その間に、公的な骨髄バンクができ、患者さんを取り巻く環境は大きく改善されました。でも、まだまだ十分とはいえません。私たちもNPO法人になったのをきっかけにこれまで蓄積してきたノウハウや人的資源を活用して、できることを増やしていかなければなりません」と、水谷さんは語気を強める。さらなるドナー登録の拡大のために、献血併行型や保健所・市町村など行政主催のドナー登録会のほか、「あいちの会」単独でできる活動を増やしたいと言う。企業などで事前説明会を開催し、それを聞き興味を持った人が献血センターなどに赴いたときには説明なしで採血、登録を受けられる流れを促すのが目標だ。また、この4月からドナー登録の年齢条件が20歳から18歳に引き下げられたことに伴い、学校関係での説明会や登録会への可能性も膨らんだ。全国的に見ると、“セカチュー”現象で去年飛躍的にドナー登録が伸びたとも言われ、今後も若い世代への働きかけは重要になる。  患者支援の方もいっそうの強化を目指す。「移植を受けた患者の中には体調不良や疲れやすさにより社会参加がままならない人もいます。見た目にはわからない症状で、周囲には理解が難しいんです。そうした患者さんが社会に足を踏み出すための予行練習ができるような場を提供したいですね」。具体的には、企業などとの共同運営によるNPO喫茶などをイメージしているという。
 目を輝かせて「あいちの会」の目標を語る水谷さん、モットーは「自分も周囲も無理をしないこと」だとか。次々に浮かぶアイデアや、週末ごとに参加するイベントの数を思うと、そのモットーを実践することが一番難しそうではある。
あいち骨髄バンクを支援する会 事務局長・理事 水谷 久美さん あいち骨髄バンクを支援する会  事務局長・理事 水谷 久美さん


【骨髄バンク基礎知識】

●骨髄移植は患者と同じ白血球の型(HLA型)を持つ人の骨髄液を提供してもらうこと。このHLA型が一致する確率は、同じ両親から遺伝子を受け継いだ兄弟姉妹間で25%。非血縁者で100人から数万人に1人と言われる。

●日本では年間約6千人の人が白血病、再生不良性貧血、先天性免疫不全症といった重い血液の病を発症。薬で治療が可能な人がいる一方で、約2千人の人が骨髄提供者(ドナー)を探している。

●日本のドナー登録者は現在約20万人。目標とされる30万人が達成されればさらに多くの患者さんに骨髄移植を受ける機会が増える。

<ドナー登録の流れ>
1. ドナー登録会か保健所・献血ルームなどの登録窓口へ
2. 説明員による説明および申し込み手続き
3. HLA型(白血球の型)を調べるため腕の静脈から2mLを採血(無料)
4. HLA型がコンピュータ登録され患者の型と適合した場合は骨髄提供についての詳しい説明
5. 最終的な骨髄移植の意思確認

<ドナー登録条件>
・年齢が18歳〜50歳の健康な人(未成年は登録のみ)
・骨髄提供の内容を十分に理解している人
・体重が男性45kg・女性40kg以上の人

*その他、骨髄移植や骨髄バンクについての詳しいことは骨髄移植推進財団のホームページをご覧ください
URL: http://www.jmdp.or.jp/




 INFORMATION 

  特定非営利活動法人 あいち骨髄バンクを支援する会
  〒460ー0024 名古屋市中区正木3ー13ー8ー702
  TEL&FAX:(052)323ー9199
  E-mail:npoaichi@tj9.so-net.ne.jp
  *愛知県県内のドナー登録窓口や、予定されているドナー登録会の日程や会場については上記の連絡先にお問合せください。

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