知的障害をもつ人たちがいきいきと働く
地下鉄東山線の藤が丘駅からバスで2つ目の停留所、新藤森橋で下車をし、徒歩で5分ほど行った香流川のすぐ近くに知的障害を持つ人たちの作業所、「TUTTI」の建物がありました。私が到着した9時半頃には、「新鮮野菜」ののぼりを立てた生鮮市のコーナーで、オレンジ色のエプロンをつけた利用者の方数人が買い物かごを拭き、掃き掃除をして開店の準備をしていました。10時半の開店に向けて農家から届いた野菜や果物に値札をつけ、机の上に並べていきます。挨拶はしっかりと、おつりはゆっくりでもいいから丁寧に・・、と職員の方から注意事項が伝えられると、利用者の方たちの表情は少し引き締まった様子でした。
さあ、いよいよ開店です。自転車で、歩きで、近所の方が続々とやってきて、開店直後の30分間は大盛況。「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」の声が飛び交い、レジでは順番を待つ人たちの行列ができていました。「ここの野菜は安くて美味しいのよ」と友人を連れてくる方がいると思えば、「レジを待つのもみんなと話せるから楽しいのよ」と野菜の調理方法を話題に盛り上がり、帰りがけに声をかけてくれた方もいました。売り場では野菜の補充や案内をする利用者の方がたくさん声をかけてくださり、嬉しい驚きでした。一言一言があたたかい言葉で寒さが吹き飛びました。また、野菜をいっぱい買ったおばあさんを見つけて、そのかごをレジまで運んだり、レジを1つ1つ確実に打っている利用者の方の働く姿が頼もしく思えました。13時半の閉店時には山積みだった野菜がほぼなくなりました。
反省会で、前回は約7万だった売上が今日は8万2,105円、利用者は91人、と発表され、いつもより多い売上に「おお〜っ」と声があがり、利用者の方々と一緒に喜びました。
近所の人が次々と野菜を買いに来ています。
生産者の名前が値札に貼られています。(左)
安心・安全・新鮮な野菜です。机にのりきらない野菜がありました。(右)
地域と交流の拠点をめざして
tuttiとはイタリア語(音楽用語)で「みなさん一緒に」という意味。
障害を持つ人も持たない人も地域で共存していきましょう!
という願いをこめて名づけられたそうです。「地域と結びつき、利用者が主体となって働くことを目標にしている」と施設長の飯田さんは語ってくれました。地域の人が野菜を買いに来て、利用者の方と会話を交わす生鮮市は、ほんのわずかな時間でありながら、確かな地域との結びつきがあり、利用者の方が自分の仕事に手ごたえを感じているひとときだったと思いました。朝は緊張していた自分が、生鮮市で働く利用者の方からも地域の買い物客の方からも、たくさん元気をもらって新鮮な気持ちになれた1日でした。
体験・文
ボラみ隊 小笠原 美奈
NPOへの10日間の派遣研修で、ボラみみより情報局でインターンをした市役所職員。
休日は地元の吹奏楽団でトロンボーンを演奏しています。