名古屋周辺地域を襲った「東海豪雨」から丸3カ月。
この水害は、さまざまな課題を残しつつも、
ボランティアをはじめあらゆる人々や団体の活躍を印象づけました。
なかでも、一般に「社協」の呼び名で知られる
社会福祉協議会(以後社協の存在は見逃せません。
救援活動の大きな柱として機能した名古屋市の社協、
この水害を通して、その役割が改めて見直されています。

被災した人のことを第一に考えました
名古屋市西部水害ボランティアセンター長(現市社協ボランティアセンター次長)を務めた石黒さんのもとに、広域ボランティア支援本部立ち上げの連絡が入ったのは9月12日午前。テレビや新聞などのメディアを通して、東海豪雨の惨状が明るみに出た頃です。「初めからやるつもりでいました」と、当時を語る石黒さん。その言葉の通り、市社協の水害ボランティアセンターは、水害ボランティアセンター設立の告知、また被災地域の住宅を訪問しチラシを配って歩く、といったローラー作戦を繰り広げました。また、被災した人たちの救援に漏れがないよう広報車の手配、被災した高齢者宅には地域の民生委員を通して知らせるなどといったきめ細かい救援活動も展開させ、市社協ならではのネットワークをフルに生かしました。

ボランティア活動をしやすくするだけです
今回の水害では、3週間3地域に、社協からのべ240名の職員が配置されました。ただし、センターの運営には大量のボランティアの手を借りる必要があり、そのまとめ役としての仕事は、他地域での水害時ボランティアコーディネート経験者をスーパーバイザーとして迎え入れ、任せました。石黒さんいわく、「わたしたちの仕事は、ボランティアさんが活動しやすくするようにすることでした」。
機能の中枢を担った水害ボランティアセンターは、当初14日に名古屋市北部と南部に立ち上げられましたが、センターと被災地が離れていたこともあり、ボランティアからの要請により急遽18日西部にも設置。社協は名古屋市と協力して、ボランティアの足として自転車、無料市バス直行便の手配、また救援活動をするボランティア用のスコップやバケツなどの備品の調達にも力を注ぎました。

公設民営の良さが生かされた
水害ボランティアセンターをめぐっては、水害2日後の設置が早いか遅いか、場所が被災地から離れすぎていたのではないか、など議論が必要な課題を残したのも事実です。しかし、公設民営という形により、市からは、施設提供、無料市バスの手配、また大量の自転車貸与、さらに、JC(青年会議所)や企業関係からも大量な物資や資金的な援助などを受けることができました。NPOやボランティア団体が単独で活動しても大きな支援は望めず、また行政だけでも迅速な支援活動も期待できない、といった点から言えば、災害時における各機関の役割が改めて見直されたといえるのではないでしょうか。


今回の水害救援活動では、社協はもちろん、行政、企業、JC、NPOやボランティアなどの協同作業が今大きな力として働きました。こうした協同作業が社会問題の解決の大きな力として日常の活動に生かされる礎となることを願います。



社会福祉協議会:
地域の福祉活動を推進する目的で、全国の市町村に設置されている社会福祉法人。ボランティア活動や高齢者、障害者福祉などに関する各種事業を行う。名古屋市には、市社協のほか区単位の区社協も設置されている。






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