ロゴ「インタビュー」
NPO愛知ネット
「東海地震が起こっても、被害を最小限で食い止められるようなコミュニティ活動に、いかに取り組むか。」
2003年1月 特集
「いつ起きてもおかしくない」といわれる巨大規模の東海地震。それに備えて、地域の防災力を蓄えることは大きな課題だ。その担い手として、地域に密着した災害救援団体への期待は高まっている。災害時にインターネットを使って、情報の面から支援を続けてきたNPO愛知ネット。2000年9月に起こった東海豪雨でも情報によるボランティアコーディネーターとして活躍した。 安城市に拠点をおくNPO愛知ネットの活動と東海地震を視野に入れた取り組みについて、理事長の天野竹行さんと事務局の岡坂健さんのお二人に話をうかがった。
リアルタイムに生きた情報を

―災害時にホームページを立ち上げ情報発信するという試みはいつから始めたのですか。
岡坂  NPO愛知ネットとしては、2000年3月の北海道有珠山の噴火からです。ボランティア本部の体制づくりに関わりました。災害直後、全国から本部へ次々にかかってくるボランティアの電話の問い合わせに深夜まで追われている現状を見て、ホームページを立ち上げ、どのようなボランティアが現地で必要とされているか情報を発信しました。  僕自身は個人的に、1998年の栃木県那須の水害で経験しています。当時大学生で、震災から学ぶボランティアネットの会(現レスキューストックヤード)のメンバーとして、たまたまパソコンを持ち込んで現地入りしたんです。ホームページを作成できたので、じゃあホームページを作れと言われて。その頃はまだ速い回線もなかったし、一回線を昼間は電話に使って、夜は付け替えて通信に使っていましたね。実はその前に日本海重油流出事故があって、そのときに現地にいてインターネットやメールがこれから災害救援のひとつの力になるんじゃないかと感じていました。

―東海豪雨でも情報班としてサポートされました。
天野  災害直後から、愛知県内の市民活動団体が集まって、県と一緒にボランティアセンターを立ち上げ、ボランティア活動の交通整理をしました。とくにNPO愛知ネットではホームページでボランティアへ呼びかけるとともに、被災状況など必要な情報をリアルタイムに流しました。具体的には、現地に出向くボランティアの交通手段、装備・注意点、ボランティア受付けの連絡先、支援金の受付先、救援物資に関する情報、被災者のための保険適用の説明、各企業からの生活支援情報といったもの。
 マスメディアから伝えられる情報は、災害の一面を切り取って報道するため、必ずしもボランティア活動にとって有用かというとそうではない。正確な被害状況、自分たちがどこに行き何をすればいいかという生きた情報が求められます。水害では、水が引いてからのボランティア活動が主になるため、いかに水が引く前に活動準備できるかに大きく左右されることを実感しました。

継続に向けて ―

―災害のない時、いわゆる平常時にはどのような活動をしていますか。
写真「NPO愛知ネットの方々」岡坂 平常時の活動は災害救援団体の課題です。阪神淡路大震災後しばらくは啓発とか教訓を訴えるという目的で助成金を受けることもできた。でも数年経つと難しくなりました。僕らはその状況、課題をみてから立ち上がった団体なので、平常時にどのような活動をすべきか考え、さまざまなプロジェクトに取り組んでいます。  NPO愛知ネットでは「災害救援」のほかに「社会教育」「市民活動団体サポート」「まちづくり」の4つの柱で活動しています。「社会教育」の一環として取り組んでいるパソコン講座は、農協やライオンズクラブなど地元の企業や団体から依頼を受けたり、行政からの委託でIT講習会をやってきました。外国人、障害者向けのパソコン講座もその流れでやっています。
天野  もともとパソコン講座をやろうと思ったのは、有珠山での体験がきっかけです。住民のおっちゃんがインターネット上に避難所同士の情報交換のために掲示板を作った。それを実際使ったのは小学生たちで、遠く離れた避難所の友達同士で通信していた。パソコンの使えないお父さん、お母さん同士は子どもに「だれだれのお母さんにこう伝えて」と頼んでいた。大人同士が通信することができたら、もっと言いたいことや励まし合いもできるんじゃないか。その思いが強くなって、じゃあ帰ったら中高年者向けのパソコン講座をやりましょうと。ちょうど国がIT講習を推進した時期とも重なりました。  僕らの活動は、当然ボランタリーな部分もなきゃいけないけど、いくらボランタリーな気持ちがあって、そういう人間が集まったとしても、継続できなければ意味がない。僕らは「食えるNPO」になりたい(笑)。うちのスタッフは9人全員が有給職員。事務局が食えるためには、安心できる継続性のある活動の場、つまり収益の上がる何らかの事業が必要なんです。

コミュニティに根ざして ―

―東海地震の取り組みについておうかがいします。2002年4月に、東海地震の防災対策強化地域が見直されて、愛知県では震度6弱以上の地域が、従来の新城市1市から名古屋市を含む58市町村に拡大されました。それを受けて活動はどう変化していくのでしょう。
岡坂  震度6弱というと、神戸の震災ほどではないんです。死傷者が出るとすれば、屋内で家具が倒れる、屋外のブロック塀や危険物の落下による方がむしろ多い。それは防がないといけないし防ぐことができる。例えば家具の話になると、家庭にいる人に直してもらわないとどうしようもない。僕らができることというと、どんな活動をやりましょうじゃなくて、いかに普段から地元の人たちと密にコミュニケーションを取って信頼関係を作って、話を聞いてもらえるかということ。防災という領域になると、町内会の人たちと信頼関係ができていないとどうしようもない。じゃあまず地元からお願いしていこう、話をしていこうと。
 災害救援団体の共通の課題は、今までは災害が起こったときにどうやってボランティアをコーディネートするかだったのが、最近は「災害が起こっても被害を最小限で食い止められるようなコミュニティ活動を、普段からいかに地元でできるか」というテーマに移行してきています。東海地震が起こる前には警戒宣言が出る。その前に判定会が招集されたという情報が流れる。場は混乱します。そのとき住民が適切に動けるかどうか。被害を最小限にする防衛策をいかにやっておくか。そのためには啓発よりもっとつっこんだ形の、コミュニティ活動が必要なんです。

―具体的な活動があれば教えてください。
岡坂  「避難所体験」という防災訓練のプログラムを始めています。私たちの団体がある安城市も東海地震の強化地域指定を受けて、通りいっぺんの防災訓練のあり方が問われ始めた。そんな時ちょうど町内会が防災訓練のコーディネートを外部にお願いしようということで、話がきたんです。実際に避難所となる小学校の体育館で、一泊の体験とさまざまな体験型の演習をするものです。今後、周辺地域の町内会の他、小学校、中学校にも呼びかけていこうと考えています。  それから今、防災袋を販売しようと計画中です。一般的な防災袋と同じようなものですが、どんなすぐれもの便利グッズを入れようか検討しています。あとは市町村、企業での講演会活動を続けています。

―いざ地震が起こったときの行動、また情報という面ではどのようなことを考えていますか。
天野  自分も被災者になりうる。そのとき果たしてボランティアに行く気になるのかどうか。他人の援助などできない場合もある。家族、親戚、地縁、血縁もあるから、そこを大事にした上で、自分が活動できる状況になったときに、やりましょうと。ただスタッフ同士連絡だけは取れるようにしておこうと。携帯電話も災害時には最初の2時間ぐらいはたぶん通じるから、その2時間が僕らも勝負。じゃあ連絡がとれなかった場合、そこで「無線」を使うということになります。  うちが開発して特許を取った無線があるんですが、アナログ電波をデジタル電波に換える。それをインターネットの回線にのせれば遠くアメリカでも話ができるんです。それを今後推進していこうというのが一つあります。もう一つは、今、市町村で防災無線というのが眠っているんですよ。行政が持っていてどこの市町村にもある。例えば公民館なんか行くと、ひからびた黄色いカバーがかかっていたりする機械なんですが(笑)。市内の各公民館を結んで、生涯学習の情報、市民活動の情報を流すことも可能です。これを普段からうまく活用できるように、その訓練を私たちにやらせていただけないかと。それが災害時に生きてくるんじゃないかと考えています。

地域住民みんなで防災を考える「避難所体験」
写真「避難所体験の様子 防災ワークショップ」 
愛知ネットが企画担当した初めての避難所体験が、2002年11月16日(土)、17日(日)の2日間にわたって安城市立安城北部小学校で開催された。子どもからお年寄りまでの住民とボランティア合わせて総勢約170人が参加。地震の時、実際の避難所となる小学校を舞台に、炊き出し、宿泊体験、防災ワークショップなどさまざまなプログラムを実践。
いざという時に自分はどう行動するのか、みんなで助け合えることは何か、自分たちのまちの弱点はどこかなど、防災意識を高めるとともに、問題点や課題を考える機会となった。参加者からは「まず自分たちがしっかり行動することが大切だと身にしみて感じた」「楽しみながら防災について考えることができた」といった声が聞かれた。 写真「避難所体験の様子 炊き出し」
ロゴ「インフォメーション」
NPO愛知ネットではボランティアを募集しています。
パソコン講座の講師、HPの作成、イベント企画などなど。
●ホームページで登録もできます。

http://www.npo-aichi.or.jp

●所在地 愛知県安城市東栄町1ー7ー22内藤ビル2階 
     TEL&FAX : 0566ー98ー5352
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