25年以上の歴史託児の会「たんぽぽ」
「特定非営利活動法人 子育ち・子育て支援NPOたんぽぽ」を語る上で、ふれずにはおけないのが、託児の会「たんぽぽ」の存在だ。名古屋市女性会館が開館するにあたり、子育て中でも学びたい、子育て中だからこそ学びたいという親の学習権の保障のため、専用託児室が設けられた。そして、女性会館主催の養成講座修了者により託児の会「たんぽぽ」が結成され、市民が市民を支える活動として女性会館での講座の託児を始めた。
託児の会「たんぽぽ」では、ただ子どもを預かるだけでなく、子どもも託児室で成長してほしい、保育者自身もその活動の中で成長したいとの思いから、「三者(親・子ども・保育者)の育ち合い」を目的としている。そんな「たんぽぽ」の託児には定評がある。託児を利用した母親からは、「子どもと離れるのは初めてで、大丈夫かと不安だったけど、迎えに行くと意外にも子どもはニコニコ笑顔でした。ていねいに託児してくれるので安心です」などの感想が多く寄せられる。一度託児を利用した人のリピーター率も高く、託児付の講座は毎回人気が高い。「たんぽぽ」のメンバーが、それぞれの地元で新たに託児グループを立ち上げたり、他の子育て支援・親支援のグループを立ち上げたりという事例も数多く、この地域の子育て支援グループの草分け的な存在として、今もなお重要な役割を担っている。 |
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より広い支援のため、NPO法人に
女性会館主催の託児以外にも、他からの託児依頼や講師派遣などが増える中で、メンバーからは「NPO法人として、もっと広い子育て支援活動をしたい」という声が上がるようになった。
確かに、法人格を取ると、社会的信用につながり、行政などの事業を請け負いやすいなどのメリットはある。しかし、事業報告や会計報告などの事務処理が増えるというデメリットもあり、法人化については何度も話し合われた。「法人になった方がいいという声は多かったのですが、煩雑な事務作業はどうしても一部の人間の負担になってしまうので、すぐには決まらなかったですね」と、理事長の野原淳子さんは当時を振り返る。
1年以上かけて話し合った結果、2003年9月、託児の会「たんぽぽ」とは別に、「特定非営利活動法人 子育ち・子育て支援NPOたんぽぽ」が設立された。当初の会員は、託児の会「たんぽぽ」の会員全員とプラス他からも募集。託児の会「たんぽぽ」は女性会館との個人契約ということもあって、「少なくとも月1回は託児に入れること」「毎月の定例会には必ず出席すること」など条件が比較的厳しくなっており、養成講座を修了したもののこの条件はクリアできない人などが「NPOたんぽぽ」に入会した。現在保育スタッフが51名。保育スタッフは、原則として託児者養成講座(女性会館以外での講座も含む)を修了していることを条件としている。保育スタッフ以外も含むと会員は70名以上になる。今のところ全員女性で、30代から80代までと幅広い。自身が「たんぽぽ」の託児を利用して講座を受け、その活動に賛同して入会したという人が多い。 |
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託児風景。託児室では、保育者は子どもたちが安心して遊べるように見守る。女性会館の託児室は、屋外に砂場も併設。 |
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「たんぽぽ」のメンバー。おそろいのエプロンで。ボランティアとはいえ、子どもを預かる責任のある活動なので、託児者には内部で決めた報酬が支払われる。 |
NPO法人としての1年半
2003年9月に法人を設立してからもうすぐ1年半、活動は確実に広がっている。託児依頼が格段に増えた。行政からの依頼も多い。託児の会「たんぽぽ」とは全く別組織というものの、「会員がほとんど重なっているので、派遣する保育スタッフのコーディネートには毎回苦労しています」と嬉しい悲鳴だ。
2004年度は助成金による活動もできた。「子どもも大人も育ち合う子育て支援事業」として、「子育ち・子育て支援者スキルアップ講座」・子育ての悩みなどを語り合う「しゃべり場」・1歳以上の子どもとその親が一緒に遊ぶ「あそび場」の3本柱で夏から実施してきた。その集大成の大交流会が3月13日に開催される(右記参照)。
法人になって大変だったことをたずねると、「会計処理ですね」と理事たちは口をそろえる。専門家から何度もレクチャーを受けてスタートしたものの、昨年度は苦労の連続だったという。初めての確定申告では、詳しい知識を持ち合わせていなかったために悪戦苦闘した。
そのような経験をしながらも、「法人になってよかった」と理事のメンバーは言う。「行政からの託児依頼は格段に増えたし、何より、自分たちのしたいことを自分たちのやり方でできる」。今後も、託児活動はもとより、今年度助成金で行った「しゃべり場」や「あそび場」のような事業を継続していきたいと話してくれた。法人設立の際に何度も話し合って決まった「特定非営利活動法人 子育ち・子育て支援NPOたんぽぽ」というやや長めの名前には、“子どもは自ら育つ力、育ち合う力を持っている、子どもを人として尊び、子どもも大人も「その人らしさ」を大切に、人と人が支え合い、育ち合う社会を作りたい”という思いが込められている。 |
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助成事業「あそび場」風景。1歳以上の子どもと親が一緒に遊ぶ。20組の定員が毎回すぐに埋まったという。 |
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助成事業「しゃべり場」風景。お茶を飲みながら子育ての悩みなどを話し合う。 |
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