2005年 9月号 ■特集■                        HOMEへバックナンバーへ
     
   伝えたいものがある街、瀬戸で。
   〜〜〜 瀬戸英語ボランティア・グループ 〜〜〜

  “焼き物の街、瀬戸市”を舞台に、英語を使ったボランティア活動を行っている「瀬戸英語ボランティア・グループ(以下SEVグループ)」。
  「英語が好き」「コミュニケーションが好き」という人たちが集まり、それぞれの目標に向かって頑張っている。
  今回は、定期的に行われている勉強会にお邪魔し、メンバーのみなさんに話をうかがった。



「英語でのお手伝い」に勉強は欠かせない。


  SEVグループの活動は、瀬戸市を訪れる外国人への英語による観光案内を始めとし、各種通訳や翻訳、日本人向けの英語講座の開催など、地域のニーズに応じ、英語を使ってさまざまなお手伝いをすることである。英語や国際交流に関心のあるメンバーが集まっているとはいえ、いつどんな依頼が来ても英語できちんと対応するためには、日頃の勉強は欠かせない。そこで、毎週水曜日と土曜日に、基礎クラス、通訳クラス、ガイドクラスの3つのクラスを設けて勉強会を行っている。メンバーは毎週、前半は各自の関心とレベルに合わせて基礎クラスと通訳クラスのいずれかに参加し、後半はガイドクラスに参加する。また、実際に瀬戸の街に出る実地練習も不定期に行っている。
 
土曜日の基礎クラス。頭を抱えて考え込む場面も。
年配の人が多いが、「年配の方の社会経験は時に英語力よりも外国人に
良い印象を与えます」と青柳さん。
土曜日の基礎クラス1 土曜日の基礎クラス2
土曜日の基礎クラス3 土曜日の基礎クラス4
  ある土曜日クラスの1日
土曜日の通訳クラス。ゲストのトリクさんを交えて意見交換。
土曜日の通訳クラス1 土曜日の通訳クラス2
土曜日の通訳クラス3

 
  基礎クラスも通訳クラスも、朝の9時半にスタートする。ある土曜日の基礎クラスでは、現役の社会人から退職者まで、6名のメンバーが、テキストに沿って勉強をしていた。英語のテープを流して一人ずつ訳していく練習や、聴いた英語をそのまま声に出すシャドーイングなど、リスニングや文法を中心とした、英語を「聴く」「話す」ための基本的な訓練を行う。テープを聴くみなさんの表情は真剣だが、お互いにいい訳を提案し合うなど、終始和やかな雰囲気だ。基礎クラスでは、毎回リーダーが交代し、その日のリーダーが授業を進めるという、ユニークかつ効果的なシステムをとっている。また授業後は、次週までに暗記してくる箇所をテキストから選ぶなど、課題もしっかりある。この日の授業は、元陸上選手の君原健二さんの話が題材。そこで、参加者からは「せっかくなので来週までに陸上競技用語を調べてきませんか」とすかさず提案があがり、勉強熱心さが伝わってくる。
  基礎クラスとはいえ、参加者の英語のレベルに多少の差があるのはやむをえない。それでも、「みなさんに直していただきながら学んでいる」「本当に少しずつですが、暗記が早くなりました」と、それぞれが自分自身やお互いの成長を楽しんでいる様子だ。メンバー同士助け合う場面が多く、初めての人でも安心して参加できる雰囲気だった。 
 一方、隣の教室の通訳クラスでは、名古屋国際センターに張り紙をして募集したという、バングラデッシュ人のトリクさんをゲストに迎えて、バングラデッシュに関するプレゼンテーションやフリーディスカッションが行われていた。「日本とバングラデッシュの国旗はよく似ているけれど、色や中央の丸にはどのような意味があるの?」といった質問があがる一方で、メンバーからは事前に調べてきた情報も積極的に交換される。しっかり準備をして参加することで、内容の濃い勉強会を全員で作り上げている感じだ。議論は内戦などのテーマにも及び、他国の事情を知ることが、国際交流の前提として大切なことだということに気づかされる。
 約1時間の前半クラスが終了すると、全員が1つの教室に集まってガイドクラスが始まる。この日は各自で準備してきた「愛知万博についての感想」を英語で発表し、隣の人がその通訳を務める。「万博を楽しむ極意は人とのコミュニケーション」と多くの人が口を揃えて言う一方で、ガイドブックなどには載っていない愛知万博の魅力や、個人的な発見、意見を盛り込んでいる発表に、それぞれの個性豊かなガイドぶりが想像される。またトリクさんからも、外国人の視点で意見があがる。このガイドクラスの時間、新しい発見の連続だったことが、みなさんの反応からうかがえた。

         瀬戸市以外からも参加。
          瀬戸を知って瀬戸を好きになる
         愛知万博はよいきっかけ。
               実践の場が増えて喜ぶ
 
そんなSEVグループの設立は平成10年。瀬戸市国際センターの通訳養成講座に参加した青柳さん(現SEVグループ代表)らが、「英語を学びたい」「英語を使って何かしたい」という人が大勢いることを知り、講座終了後に仲間15名で立ち上げたのが始まりだ。その後メンバーの入れ替わりはあったものの、現在は20代から70代まで、約30名が会員として参加。尾張旭市、春日井市、名古屋市など、瀬戸市以外から通っているメンバーもいる。「瀬戸のことはよく知らなかったし、瀬戸物にも興味はなかった」と話すのは春日井市から通っている小田さん。昨年SEVが行ったボランティア1日体験講座に参加し、瀬戸の歴史を知って興味を持ったことをきっかけに、そのままメンバーになったそうだ。今でも「瀬戸のことを知ることができて楽しい」と話す。
 
 陶器の街「瀬戸」には、観光地としての魅力が多い。観光客やイベントも多く、「瀬戸市おもてなしボランティア」という瀬戸市のホームステイ・プログラムの関係でSEVグループに観光ガイドの依頼がきたり、今年度は「国際セラミック&グラスアートフェスティバルin瀬戸」で、ボランティア通訳として15名のメンバーが派遣されたりと、地域のニーズに応えている。
  また瀬戸ということで、愛知万博の影響も大きかったようだ。昨年度、愛知万博の開催に際し、瀬戸市を訪れる外国人観光客に誰もが易しい英語で案内できるようにと、瀬戸の案内マニュアル「やさしい英語でガイドする瀬戸」を会員有志で作成、出版した。約70ページにわたって、瀬戸市内の観光名所や陶磁器産業の歴史、陶器と磁器との相違などを説明する豊富な例文を、日本語と英語の対訳付きで掲載した。また万博会期中には、オーストラリア館でのフロア通訳の依頼もあった。このように、「勉強」と「実践」の両方の機会があることが、みなさんの勉強に対する意欲と上達の秘訣なのだろう。青柳さんも、「瀬戸には伝えていきたい材料があるので、それがいい目標になっています」と話す。
  さらにSEVグループのメンバーの中には、愛知万博がきっかけでグループの活動に参加し始めたという人もいる。「英語は大学受験以来だけど、せっかく地元で万博があるのだから、ただ見るだけではなく、刺激になることをやろうと思った」と話すのは安東さん。「普段の勉強の実践の場として、恥をかいてもいいから、各パビリオンのスタッフとはできるだけ話すようにしている」「仕事で英語はよく使うが、仕事以外の話になると会話が思うようにできない。外国の方に会って、自分の関心のあることを相手に質問したり、自分から提供できる話のネタがもっと欲しい」という人も。そんな前向きな思いをもったSEVグループのみなさんの思いが伝わり、万博が終わっても、瀬戸を訪れる人が増えるといい。 



実地練習の様子。日頃の勉強の成果を発揮し、
新たな目標につながる貴重な時間。
ガイドの様子1 ガイドの様子2
ガイドの様子3 ガイドの様子4
 

 
瀬戸英語ボランティア・グループ
勉強会は、瀬戸市のやすらぎ会館にて
毎週土曜日9:30〜12:00・水曜日10:00〜16:00
見学も大歓迎です。気軽に遊びに来てください。

Tel/Fax:0561-83-0268
E-mail:h-aoyagi@gctv.ne.jp
URL:http://www.gctv.ne.jp/~h-aoyagi

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