トップページへ  <  特集記事一覧へ

思いを分かち合い、介護の支えに ――けあらーずサークル・てとりん――

介護殺人、介護心中、介護うつ・・・。高齢化社会が投げかける深刻な問題は、いつ自分に、 自分の家族に起きても不思議ではないできごとです。
「同じような立場の人とどこかでつながっていることがわかれば、介護の孤独感から解放されるのでは。 日々の介護の支えになる、その一助になれたら…」と話すのは、けあらーずサークル・てとりん代表の岩月万季代さん。
2010年春から、春日井市内で家族介護者のつどいを開催、介護者同士のつながりを築いています。

◆ 話すこと、聞くことでリフレッシュ

写真 

 「自分が母の介護者になって、母の人生を、意思を尊重しながら決めていかなければならない。 よりよい人生にしていくために私にできることは何か、すごく苦しみました。 介護者の気持ちの葛藤、心の苦しさをフォローし合える場があれば、と探しましたが、身近になかった。 介護経験を持つ仲間と、これからはそんな場が必要だよねと話し合い、会をつくりました」と代表の岩月さん。
 春日井市総合福祉センターで、毎月1回開かれる家族介護者のつどいには、会を立ち上げたスタッフ4名のほか、そのつど新しい参加者が増えたり入れ替わったりしながら、毎回10名ほどが集まる。 車いすで闘病生活を送る親を介護する人、認知症を患う奥さんと長年暮らす人、義父の認知症による暴言に悩む人などさまざまだ。認知症だけでなく、その他の疾患、事故後の要介護者を持つ家族も対象としている。
 介護と一言で言っても、三者三様。家族の数だけ介護の形がある。 「それぞれの家庭で介護のやり方、難儀していることも違います。 男女で受け止め方も異なるし、家族の関係性によっても違う。でも一番苦しいときを乗り越えて、こうしたらこうなったという体験を聞くことで、何か知恵やヒントが見つかると思います」。 そう話すのは、毎回参加者の話に耳を傾けるスタッフの井筒久美子さん。
 介護用品のこと、認知症の人とのつきあい方といった情報交換をはじめ、それぞれが抱える悩みなどを思いのままに話す。 「話す=離す、放すこと。気持ちを吐き出すことで、状況を見つめ直し、新たな気持ちで介護に向き合えると思います」と岩月さん。 話すだけでなく、互いの考えや思いを聞くことで、気づきが生まれ、心の変化を感じ取ることができる。

◆ 介護者のしあわせのために

 イギリスでは介護者の権利を擁護する法律『介護者法』が施行されている。 その理念は、『介護役割を引き受けることによって、社会的に孤立したり、余暇が楽しめなくなったり、就労の機会が奪われたりしてはならない』というもの。 介護のために人生を楽しめないとすれば、人権侵害だという制度だ。
 日本でも2010年に、介護者を支える仕組みづくりに取り組むケアラーズ連盟の発足が決まり、『介護者支援法』の制定などをめざして活動していくという。
 「将来的に支援法ができれば、例えば要介護者を持つ家庭にカウンセラーを派遣できるかもしれない。 今はいろいろな人の話を聞いて、経験を積んでいきたい。 また、福祉制度からは目がそむけられないので勉強していきたい」と、スタッフの皆さんは心理学やカウンセリングを学ぶなど意欲的だ。
 『けあらーずサークル・てとりん』の名前には、介護者が手と手をとりあって人の輪がつながっていくように、との願いが込められている。 介護環境に共感し合いながら、前向きに介護に向き合う心を育み、絆を広げている。
 「介護はけっしてマイナスではない。 介護者の人生もよりよいものにするために、打開策はきっとあるはず。知恵、方法を共有しに、また心を解き放ちに、つどいに足を運んでください!」と、岩月さんは笑顔で呼びかける。

インフォメーション


【けあらーずサークル・てとりん】
 
●【連絡先】井筒久美子 TEL : 090-7867-2408
  E-mail:idutu@ma.ccnw.ne.jp
●これからの「家族介護者のつどい」
・日時 (2010年)12月24日(金)午前10時〜12時
    (2011年) 1月28日(金)午前10時〜12時
・場所 春日井市総合福祉センター ボランティアルーム
●けあらーずサークル・てとりん発足記念セミナー
『家族介護者の笑顔のために〜介護殺人を通してみえてくるもの〜』
・講師 湯原悦子(日本福祉大学准教授)
・日時 (2011年) 2月26日(土)午前10時〜12時
・場所 春日井市総合福祉センター1Fホール
・参加費 300円

トップページへ  <   特集記事一覧へ  <