2010年11月の平日の午前中、愛知県日進市にある知的障がい者援護施設「愛歩(あゆみ)」にお邪魔しました。とてもおしゃれな外観の施設には、喫茶店やパン工房、作業室や食堂などが並んでいます。
朝9時になると、主に知的障がいを持つ利用者さんがやって来て、タイムカードを押します。私は、仕事前に約2時間かけて歩行訓練をするグループに同行させていただきました。
この歩行訓練には、普段歩く機会の少ない障がい者にとって、外を歩くときのルールを身につける「トレーニング」、1日の生活の中での「リフレッシュ」、体を動かす「エクササイズ」といった、様々な意味合いがあります。
秋のぽかぽか陽気の中で、利用者さんはスタッフに「足をあげて歩こう」「前を見て歩こう」と励まされながら歩いていました。途中、レジャーシートを敷いて休憩しつつ、私が利用者さんと打ち解け始めた頃に、散歩が終了。障がい者にとっては、歩くことだけでも大変な活動であることを目の当たりに感じました。
「愛歩」には、特別支援学校などでの学校教育を終えた、21歳から55歳までの主に知的障がいを持つ32名の利用者さんが通っています。障がい者の中には、学校教育終了後、職業訓練を受けたり、そのまま企業で採用されたりして社会に出て行く人もいます。しかしその一方で、対人関係や能力の問題、不景気などで、就職できなかったり解雇されたりする方もいます。そのような障がい者も、仕事をして自立することが必要であり、その支援をしていく施設が「愛歩」なのです。
愛歩では、一般企業などへの就労支援のほか、愛歩の施設内での仕事や企業から受注した軽作業による賃金支給を行っています。ある女性が清掃の仕事に就いたときは、障がい者職業センターなどの機関と連携し、仕事内容に即したトレーニングや通勤路を歩く練習を愛歩で行い、就労後も様子を見に行くなどのアフターフォローをしています。
一般企業での就労が難しくても、愛歩に併設された喫茶店の店員やパン作り、パソコンを使った名刺やハガキ作り、企業や地域から受注した軽作業などの仕事を、利用者さん本人の希望と能力を考慮して分配しています。パン作りは未経験者ばかりですが、パン生地の丸め方などを中心に一から教えます。近所へ販売に行くと、「あなたたちが作ったの?すごいわね」と褒められることが励みになっているそうです。
愛歩には、毎年9月末に行われる「あゆみまつり」や11月末の「日進まつり」などのイベントで、たくさんのボランティアが来てくれます。普段の生活でも、歩行訓練などでは学生ボランティアが、読み聞かせでは福祉ボランティアが来てくれています。「外部の人たちとの関わりが何よりも利用者の皆さんの刺激になり、何かを感じてくれている」、と施設長の熊谷さんは言います。そして、ボランティアとして接するときは、相手を知りたいという気持ちが一番大切であることも教えてくれました。今回の私のように、午前中だけ、数時間だけの参加でも大歓迎とのことです。利用者さんのそばで寄り添う、ボランティアを募集中です。
体験・文 |
ボラみ隊 岡野 真衣 普段は教師生活の中で子どもたちから色々なことを学んでいます。 |