14年間連続して年間3万人以上の自殺者を出している日本。そのうちの9割が、うつなどの精神疾患にかかっていた可能性があると言われています。うつ、統合失調症、認知障害、自閉症、強迫神経症などの精神障害者の生活の質の向上を目指して結成されたのが、 愛知県精神障害者家族会連合会(愛家連)です。会長の木全(きまた)義治さんにお話をうかがいました。
<当事者の「虹色音楽隊」によるオカリナ演奏>
日本の精神科医療・福祉は遅れていると言われています。歴史的に精神障害者を隔離する政策が続けられ、精神疾患の入院患者数は34万人に達しています。日本人の400人に1人が精神病院に入っていることになり、これは欧米諸国の数倍です。日本人が多く精神疾患にかかるわけでもなく、日本人だけが重い精神疾患となるわけでもありません。日本は退院者を受け入れる社会資源が不十分なために入院者が多いのです。
家族に精神障害者がいると家族の心労は大変なものです。そこで、1人ひとりの悩みを話し合う癒しの場を作り、一緒に活動をするという目的で結成されたのが「愛家連」です。啓蒙活動としては、機関誌「あいかれんニュース」を年に7回発行し、毎回2300部を配布しています。講演会も開催し、満員御礼で盛況なこともあります。個別の悩みに対する電話相談や行政への働きかけなども行っています。
従来、3つの障害のうち身体障害と知的障害については医療費が助成されていましたが、精神障害だけは蚊帳の外にありました。愛家連が県内の市町村に働きかけた結果、人口換算で患者の87%が医療費の助成を受けることになりました。障害年金についても、この制度を知らなかったために受給できなかった人に対して広報した結果、80人以上の方たちが受給できることになりました。
精神障害者に対して、「自分とは違う世界の話で全く興味がない」という考え方が大半でしょう。しかし、社会が高度化、複雑化、成熟化する中で、真面目で几帳面な人ほど精神疾患にかかる危険性が高いと言われています。つまり「明日は我が身」とも言えるのです。
現在、患者が入院している病院の内訳は愛知県では私立病院が93%です(全国的には90%)。精神科だけの単科病院が大半で、大きな総合病院には精神科の入院病床はほとんどありません。世界的には精神疾患の入院患者数が減っているのに、日本だけが増えています。一度入院するとなかなか世間には出られない彼らですが、地域の医療と福祉が結びつき、在宅医療が充実すれば、在宅での生活がしやすくなります。
目指すは「地域で自分らしく普通に生活する」ことです。
実は、精神疾患の人が傷害事件を起こす確率は健常者より低いということです。もちろん家庭内でのトラブルはありますが。精神疾患者は誤解により世の中から差別や偏見を受け、肩身の狭い思いをしています。そうした健常者の冷たい態度、考え方が、精神障害者の人たちの普通の日常生活を阻害する要因になっているような気がしました。7月3日に講演会が行われるそうなので、多くの方と一緒に勉強してみたいと思います。