この町で親子3代に渡り素潜り漁を中心に仕事を続けてきたAさん(40代)とは、*ボランティアきずな館に遊びに来ていたAさんのお子さんを介して知り合いました。 「震災後、全てを失って何から手を付けてよいのか全くわからなかった。 海もめちゃめちゃ、家も船も道具もない。 でも七ヶ浜は昔ながらの漁師町なのだから、町を蘇らせるには俺達漁師が頑張らなければならないと思った」という力強い言葉が、今も深く印象に残っています。 Aさんは再建への一歩を踏み出すために、借金をして新しい漁船を購入することを決めました。 また、海から引き揚げてきた漁具を仲間と分け合って少しずつ修理し、えさを保管する冷凍庫等も準備しました。 「菖蒲田浜で現在漁を行っているのは従来の10分の1にしか満たない。 海に戻るか丘に上がるか今だに迷っている人もいるが、70代であっても再び船を購入して頑張ろうとしている人たちもいる。 不安は尽きないけど、やる気のある人も一杯いることを知って欲しい」。
10月28日、待ちにまったAさんの新しい漁船が進水式を迎えました。 晴天の中、キラキラと光る水面に鮮やかにはためく大漁旗とAさんの笑顔を見た時、「船は俺の体の一部。 船が手に入ることはまるで翼を得たような喜びなんだ」という言葉がよみがえり、涙がにじみました。 Aさんは現在、11月に七ヶ浜の名物料理「ぼっけ汁」のお祭りを開催すべくぼっけの大漁を目指して海に出ています。 「俺は自分の獲った魚を人が食べた時の『うまい!』の一言と笑顔を見るのが大好き。 早く地元の人の『うんめぇ!』の笑顔を取り戻すことが、一番の自分の仕事だと思う」と照れくさそうに笑いました。 RSYもこの企画を全面的に応援するつもりです。