東北地方に甚大な被害をもたらした3.11後、愛知県内でも放射能汚染の心配を危惧する声が聞かれました。そんな中、静岡県浜岡原発の即時停止を求める声明文を発表するなど、愛知県内でも放射能被害に対する強い危惧を抱き活動するNGOがありました。1990年より、チェルノブイリ原発事故の被災者支援の活動を続ける「チェルノブイリ救援・中部」です。日本の民間団体としては初めて医薬品や医療機器などの援助物資を持って現地を訪問するなど、危機的な状況に陥っていたウクライナへ積極的な支援を行ってきました。
これまでの活動を生かし、今回の震災を受けて取り組んでいること、発信していることを理事である河田昌東さんにうかがいました。
チェルノブイリ救援・中部主催の講演会の様子。
伝え続けることに尽力
チェルノブイリ救援・中部では、福島第一原発事故が発生直後、静岡浜岡原発の即時停止を要請する声明文を発表しました。「私たちは21年間チェルノブイリの被災地に入り、被災者の実情を見てきました。多くの方々が経済困難や病気と戦わざるを得ない状況を知り、日本での講演、機関紙などを通じて市民に知らせ、原発事故がいかに恐ろしいかを伝えてきたつもりです。しかし、25年経って同じ事故が日本で起こりました。今後は、さらに多くの方々にチェルノブイリの現実を知ってもらい、それでも人々は強く生きていかざるを得ない、ということを伝えたい」と河田さんは真摯に訴えます。
会では6月24日から数回にわたり福島県南相馬市と福島市に現地入りをし、ボランティアスタッフや現地住人と共に放射能測定を行ってきました。今後も引き続き現地入りし、放射能測定をする予定があるそうです。また、HP上では放射能や原子エネルギーについての詳しい解説や、メールによる相談に応じており、放射能に対する地域住民の不安解消にも尽力しています。
菜の花に希望を託して
18年にわたり医療支援を続けてきたウクライナのナロジチ地区で、5年前から菜の花プロジェクトに取り組んでいます。菜の花には土壌中の放射能を吸収する力があるため、汚染された農地に菜の花を植え、土壌を浄化し、農地を再生するというものです。収穫された菜の花は放射性物質の吸着媒体としてだけではなく、放射性物質は含まないクリーンなバイオエネルギー――ナタネ油はディーゼル燃料として、油粕は燃料や発電エネルギーとして利用可能なバイオガス――としても再利用することができます。
チェルノブイリ救援・中部主催の講演会の様子。
チェルノブイリ事故のような悲劇を繰り返さないためにも日夜活動しています。
「日本でもお役に立てるなら、喜んで引き受けたいと思います。ただ、福島の今の土壌汚染が、25年経ったチェルノブイリと違い、汚染がまだ土壌表層にとどまっているので、今すぐにできることは必ずしも、ナタネを植えることではないかもしれない。まず、可能で効果的な方法から取り掛かりたいと考えています」と河田さん。将来的にバイオエネルギー生産に取り組む自治体や農家が現れれば協力を惜しまず、支援する準備はあるそうです。