「ボランティア」という言葉は何か特別なことをするものだと考えていた私。今までなかなか踏み出すことができないでいました。自分が役に立つことなんてあるのだろうか、と少し不安でした。 そんな私が『ボラみみ』のボランティア募集で気になったのは、あかつき共同作業所でのお弁当作りのボランティアでした。料理は好きなので、これなら少しはできるだろうと思ったからですが、当日行くまでは緊張でいっぱいでした。 あかつき共同作業所は、知的障害者の方々がクッキーやパンなどの自主製品を作ったり、企業の下請け作業を行う通所授産施設で、重度の知的障害者の方々の療育活動やレクリエーションも行っています。また、地域の高齢者の方々にお弁当を作って配達する事業もしています。 私の当日の予定は、午前中にあかつきで働く障害者の方々の補助を、午後からはお弁当作りに参加させていただくことになりました。
朝のミーティングを終え、いよいよあかつきの「仲間」たちとの対面。あかつき共同作業所では一緒に働く知的障害者の方々を「仲間」と呼んでいます。 次々と通所してくる仲間たちは、初めて見る私に興味津々。物珍しそうな顔で見つめられたり、挨拶してくれたり。さまざまな反応でしたが、自己紹介をすると私の存在を受け入れてくれたように感じました。 そして、オリエンテーションでラジオ体操や、毎年恒例の行事「あかつきまつり」で披露したソーラン節を踊りながら、みなさんの姿を見ているとのびのびした様子がうかがえて、私も少しずつ緊張が和らいできました。 オリエンテーション後は班別に分かれて仕事に入ります。あかつき共同作業所では障害者の方のレベルに合わせて、アトム班・軽作業班・のびのび班と班分けをして仕事を行っています。
私が参加することになった軽作業班は企業の下請け作業を行っていて、当日は新たな仕事の初日。内容は商品の袋詰め作業です。まずは作業しやすいように準備を行い、役割分担をして仕事を進めていきます。 私は作業に入るまで、そういうことをすべて職員や補助で入るボランティアがやるものだと考えていましたので、「やってあげなきゃ」という気持ちでいました。しかし、そうではありませんでした。「してあげる」ではなく、仲間の自立のために自分で考えさせて、一人でできるようにするのが目的で、そうできるように促すのが職員やボランティアの役割なのだと気付きました。 実際に作業を進めていると、徐々に仲間の作業ペースが速くなっていくのがわかります。また、それに気付いて私がほめると、とても嬉しそうな顔で笑ってくれます。そのたびに私も笑顔になっていました。 みんなで協力して作業した結果、仲間の頑張りが形になってあらわれて、予定より多くの仕事を終えることができました。
お昼の給食を仲間みんなと一緒に食べたあと、私は仲間の作業から離れ、調理室でお弁当作りに参加しました。一緒に調理をして、いろいろ教えてくださったのは近くに住む主婦の方々でした。 お弁当作りは時間との戦いです。みなさんに時間通りに届けられるように手際よく進めなければなりません。私は材料を切ったりして、下ごしらえのお手伝いをしました。 私が下ごしらえした材料が、次々と鍋の中でおいしそうな料理へ変わっていきます。煮炊きなどの調理をしている間も休む時間はありません。片付けや、盛り付けの準備などやることはたくさんあります。 盛り付けのお弁当箱を並べていると、付箋がついているお弁当箱が目に付きました。 聞いてみると、それはその方の好き嫌いや量の調整、食べやすいように刻むなど、それぞれに合ったお弁当作りをするためのメモだとのこと。顔を見て、会話をしながら配達するからこそ、そのようなことができるのであり、この事業が地域の中で活きているのだと感じました。 出来上がったお弁当を配達する方にお渡ししてお弁当作りは終了です。 あっという間に一日が過ぎた気がしましたが、充実感や仲間・職員のみなさんの笑顔が印象に残った一日でした。
■団体紹介 【社会福祉法人 ゆたか福祉会 尾張事業本部 あかつき共同作業所】
北名古屋市鹿田西村前92
TEL:0568−25−0171 FAX:0568−25−0168
【交通手段】名鉄犬山線 西春駅から徒歩10分
30名の知的障害者の方々が働いている通所授産施設。クッキーなどの自主製品の生産や、企業の下請け作業や缶を潰すリサイクルの仕事などを通じて、障害を持った方々の自立をめざしている施設です。
■体験・文 【ボラみ隊 小林】
現場体験型研修として、ボラみみより情報局でインターンをした県職員。普段は県立学校の事務をしています。