オシャレなおみやげ店「学生の店」誕生!  

暗めの照明と、心地よいお香の漂う店内、ジャズの小気味よいリズムが溶け込んだ空間は、おおよそ「おみやげ屋」というイメージからは、ほど遠い。瀬戸市の中心地に位置する銀座通り商店街でおみやげ品を売る「学生の店」は、まるで、どこかのギャラリー、あるいはオシャレな雑貨屋だ。 すでに、商店街や市内のイベントで、その元気な取組みが注目を集めていた名古屋学院の学生たちに、商工会議所から声がかかったのは、去年の秋。販路の開拓もままならず低迷にあえいでいた瀬戸の物産品を、何とかして生き返らせたい、その知恵を貸して欲しい、という依頼だった。学生たちのリーダー的存在だった古橋さんは、ほかの学生たちの「やりたい」の大合唱に押されて店の立ち上げを決心する。「最初は断りました。売る自信なんて、全くありませんでしたよ。だって、僕自身、買いたいって思えなかったですもん(笑)。」 ところが、店のオープンが決まると、学生たちの中から、さまざまなアイデアが出された。そして、商工会議所とも定期的に会議を持ち、良いアイデアは、次々と取り入れていった。おみやげ屋にありがちな商品の山積みはやめて、1商品1点のみ陳列させる。目利きの客や若者をターゲットに、陳列の方法や商品もこまめに変化させる。そして、一番のヒットアイデアは、みやげ品にオリジナルの添え書きを付けることだった。「物産品って、どれも同じに見えますよね。本当は深い歴史があったり、ユニークないわれがあったり、特殊な製法で作られていたりするのに。そうした情報を提供できれば、買っていった人が、持ち帰った先で『話の種』にできる。『へえ、この陶器って面白い歴史があったんだ』って事になれば、商品そのものの魅力も増しますよ」と、古橋さん。メーカーを取材したり、図書館で調べたりと、添え書きの作成には、学生たちが自ら時間と手間をかけている。その内容は、「学生の店」のホームページ上でも、さらに詳しく紹介されている。 開店以来、学生の店の評判は上々。土日だけの営業で、いくらか利益も出るようになった。しかし現在、家賃、光熱費、ボランティア店員の昼食代等を除くと、残金はほとんどゼロ。「でも」と、古橋さんは言う。「ゼロでいいと思っているんです。学生だからやれるコトと言われても仕方がないんですけど、僕らの目的は利益を上げることじゃないですから。」

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写真:「学生の店」入り口
「学生の店」
写真:「学生の店」店内の様子
「学生の店」店内の様子
写真:「学生の店」店内で売られる瀬戸の物産品
「学生の店」で売られる
瀬戸の物産品
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グローバルな視点で「まちづくり」

 名古屋学院の学生たちが、商店街に繰り出し、さまざまなイベントやまちづくりに関わるようになったのは、今から2年前。古橋さんは、当時大学4年生で、活動の火付け人だった。古橋さんは、アラスカ留学から帰国し、そこで培った視点や異文化体験を、還元できる場を求めていた。そんな時、もともと懇意にしていた大学の先生から、商店街の空き店舗対策について考えてみないか、と持ちかけられる。興味がわき、早速仲間を集め、商店街主催のイベントに繰り出した。まちの活性化にかける商店街の人々の情熱に心打たれ、「まちづくり」というキーワードが頭をかすめた。その後、「せともの祭り」をはじめさまざまなイベントで仲間たちとボランティア活動に飛び込んでいく中で、商店街とのつながりはいっそう強いものになっていく。「まちで大騒ぎしながら、少しずつ見えてくるものがありました。僕が学んだグローバルな視点といっても、それを実践していくのは、実は自分に一番身近な地域なんじゃないかって。暮らしの場こそ、僕たちの舞台だって。」 古橋さんのその発見は共感を呼び、やがて、大学の先生も巻き込んで、「人コミュ倶楽部」というグループが組織化された。学生たちの活動に、ますます拍車がかかった。 現在、「学生の店」の両隣りには、去年オープンした「人コミュ倶楽部」の事務所と、学生と商店街の有志で運営する「銀座茶屋」という茶店がある。いずれも空き店舗を利用してできたもので、学生や地域の人が集い、交流する場として賑わう。学生による3店舗は、今や銀座通り商店街活性化のシンボルといってもいいくらいに、存在感を増している。

写真:「人コミュ倶楽部」事務所
「人コミュ倶楽部」事務所
写真:「人コミュ倶楽部」で交流中の様子
「人コミュ倶楽部」内で歓談中
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次は、語らいと交流の場
「HAPPY cafe milepost(道標)」

 「確かに、イベントをやる力はつきました。でも、それだけじゃ駄目な気がします。僕たち一人ひとりに自分なりの目的がなかったら、嘘だと思いますよ。」 熱っぽく語る古橋さんは、「人コミュ倶楽部」の学生のなかでは一番年上の25才。いい兄貴分的存在だ。状況や人の意見に流されているようにも見える年下の学生たちに、「これから自分がどうなっていきたいのかを考えなくては」と、発っぱをかけることも。そして、その思いが、また新しい取組みにつながっている。「学生の店」と「人コミュ倶楽部」の壁を取り払って、大きなカフェにし、目的意識を持った人々の交流の場にするというものだ。その名も「HAPPY cafe milepost(道標)」。留学帰りの学生が異文化体験を披露したり、大学の先生が普段の講義とは一味違った人生経験を語ったり、地域の人が瀬戸の街について思いの丈を訴えたり、とにかくいろんな人がゲストスピーカーとして、それぞれのテーマで話す。一方、それを聞くために、学生をはじめさらに多くの人が集まり、そうした人々の交流により、また新しい何かを生み出そうという目論見だ。これは、「学生の店」でも、不定期ながら夜のイベントとしてすでに展開中。「学生にとっては、自分のこれからを考えるための、格好の場になるはずです」と古橋さん。すでに、行政からの補助金を取り付け、今秋のオープンに向け準備を進めている。 「学生が商店街を活性化させて、商店街が学生を育てていく。この商店街から社会に貢献できる学生が巣立っていくような、そういう素地ができれば、僕のここでの活動は終わりかな。」 ここで自分を研いて、いずれは、もう一度海外に行って働きたい。そして、また地域に還元しに戻ってきたい。学生グループを引っ張ってきた古橋さんの夢もまた、地域の小さな商店街に育てられたものだ。

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写真:「学生の店」店長、名古屋学院大学2年 古橋敬一さん

「学生の店」店長
名古屋学院大学2年
古橋 敬一さん

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Information

●名古屋学院大学「学生の店」
営業時間:AM11:00〜PM6:00
定休日:月〜金曜日(土日のみ営業)

●銀座茶屋
〒489−0043
愛知県瀬戸市朝日町26番地(銀座通り商店街内)
TEL:(0561)87−1053
営業時間:AM8:00〜PM6:00
定休日:毎週水曜日

●名古屋学院大学まちづくりNPO     
「人コミュ倶楽部」
〒489−0043
愛知県瀬戸市朝日町28-2(銀座通り商店街内)
TEL/FAX:(0561)89−7570
E-mail:ngushop@ngu.ac.jp(学生の店)
         hitocom@ngu.ac.jp(人コミュ倶楽部)
URL:www.ngu.ac.jp/ngushop/index.html
                                 (学生の店)
      www.ngu.ac.jp/hitocom/index.html
                                 (人コミュ倶楽部

  本誌掲載:ボラみみ6月号