2006年11月号 ■特集■        
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名古屋NGOセンター 人材育成の取り組み


 中部地域のNGO団体を束ねる役割の名古屋NGOセンター。43団体が加盟する、いわゆるネットワークNGOだ。NGOの活動サポートや情報提供、調査研究のほか、NGOと人々や他セクターをつなぐネットワークづくりなど、その活動は多岐にわたる。そんな名古屋NGOセンターが新しいNGOの人材を発掘し育てる目的で進めているのが、人材育成プログラム「コミュニティ・カレッジ(Nたま=NGOの卵)」。NGOスタッフを目指す人と、即戦力のスタッフを求める団体をつなぐその取り組みを取材した。


  4回目を迎えるコミュニティ・カレッジ。

 NGOで働きたい人とやる気のある人材を求めるNGO団体をつなぐ「コミュニティ・カレッジ」。名古屋NGOセンターが2002年から全国に先駆けて取り組んでいる人材育成プログラムだ。受講生たちは地域のNGOでインターンシップや事務局体験などをはじめ、NGOの理論を習得するさまざまな講座、国内国外フィールドワークなどを通じて、NGOで活動するために必要な視点、知識、技術などを約半年間にわたりみっちり学ぶ。
  4回目を迎える今年は、有給スタッフ希望のAコースに11名、無給スタッフ・ボランティア希望のBコースに9名の合計20名が約2倍の競争率を潜り抜けて受講の切符を手にした。9月23日に行われた入学式では自己紹介のほか各コースのオリエンテーション、実践活動の場と機会を提供するインターンシップ先のNGO団体がそれぞれの活動およびイベント内容などを紹介し、質疑応答などを行った。
 今年の受講生の顔ぶれは、主婦や会社員のほか現役の建築士や通訳など職種も立場もさまざま。年齢層がばらける例年と比較して、30代に集中しているのが特徴的。
  「夫の転勤で名古屋に引っ越してきて知り合いもいなくて家で悶々としがちだったんですが、こういう講座に参加して目標ができたのがうれしい。団体の事務局での実習が楽しみです」(20代主婦)、「フォスタープランへの寄付金は5年ほど続けてきましたが、テレビなどで貧しい国の子どもたちが勉強できない状況を知って自分の手でどうにかしたいと思うようになりました。将来はNGOの職員になりたいです」(30代会社員)
  入学動機について語る受講生たちは、これから始まるカレッジの各種プログラムに意欲満々で、未来に開かれているだろう新しい世界に期待を膨らませる。

  「スタッフになってからでは遅い」。


 「NGOで働きたいけれど知識や技術がないという人たちと、人手は欲しいが思うような人材が見つからないという団体の声をあちこちで耳にしていたので、ニーズがあることはわかっていたんです。でも事業化は本当に大変でした」 
 コミュニティ・カレッジを手がけてきた名古屋NGOセンター事務局次長の坂井敏子さんは、カレッジの立ち上げ当時を振り返る。この研修に参加して就職先はあるのか、という周囲の心配の声を背に、一年目、坂井さんたち名古屋NGOセンターのスタッフは、受講生の就職実績づくりに涙ぐましい努力をした。受講生の作成した履歴書を逐一チェックし、面接に同行することも度々だった。結果、約6割の受講生が就職を果たし、以降受講生46名のうち30名が全国各地のNGO団体で活躍している。
 NGOスタッフを目指す人を対象に研修を行う理由には、NGOスタッフの勤続年数の短さ、というのがある。理想と現実のギャップ、団体と自分の求めるものとのミスマッチ、少人数職場で悩んだときに相談できる人がいない、など理由はさまざまだが、夢と希望を抱いて就職したNGO団体をたった1、2年で去っていく人は多い。
「現役NGOスタッフの研修を何年か続けていく中で、現役スタッフになって研修を受けていては遅いと気づきました。就職する前にいろんな団体の特徴を知り、自分の視点を持ち、さらに困ったときに相談できる仲間、ネットワークを作っておくことが大事ですね。それが、就職してからの自分を助けてくれます」と坂井さんは語る。
 コミュニティ・カレッジでは、横とたてのつながりをさらに強化しようと、去年からここを巣立っていった1期生から3期生が「サポーター」として受講中の人の相談に乗ったり情報提供をする仕組みを取り入れた。インターンシップの受け入れ先も卒業生の所属する団体が年々増え、カレッジのネットワーク全体が受講生を手厚く支えている構図だ。


入学式で受講生の自己紹介


   Nたまをモデルに、他の地域にも。

 今では、地域のNGO団体の間で「Nたま」の愛称で広く知られるようになったコミュニティ・カレッジ。これは、全国のネットワークNGOの中でも古株に数えられる名古屋NGOセンターが、将来の展望をめぐって揺れた時期に開発された事業でもあった。
「Nたまを始める前まで、NGOセンターはいろんな経過をたどってきました。加盟団体からは、イベント屋と化しているとか、行政の下請けに甘んじている、といった批判を多く浴びたこともあります。拡大路線を目指す前提では、どうしてもお金になりやすい事業に傾きがちで、団体のネットワーク作りなど本来やるべき役割が手薄になっていたのは事実ですね」と、坂井さんは言う。
 その後、名古屋NGOセンターは、拡大路線の道を捨て適正な活動規模での運営の道を選択。改めて、加盟団体とセンターのスタッフが集結し、センターがめざす社会像や行動規範などを記した名古屋NGOセンター憲章(ステファニ憲章)を作成した。そしてその理念を映し出す象徴的事業として開発されたのがコミュニティ・カレッジだった。
「Nたまはセンターが単独でやる事業ではありません。すべてのプログラムの材料は、中部地域のNGO団体が提供するもので、私たちの役割はそれをコーディネートすること。つまり多くの団体と交流しながら事業を進めることができるということで、ネットワークキングというセンターの基本的な役割も果たすことが可能になっているのです」と坂井さん。最後にこう結んでくれた。
「Nたまは、政府や行政のパッケージではなく、私たちが現場のニーズを読み取って作り上げたオリジナルのプログラムです。Nたまをモデルに、今後こうした取り組みを他の地域に広げていきたいと思っています」
 今年はまず、名古屋NGOセンターのアドバイスを受けて、福岡のネットワークNGOが同様の人材育成ログラムを開始した。




 名古屋NGOセンター
    事務局次長
    坂井 敏子さん
          インドでの海外フィールドワーク(1期生)
                                        



特定非営利活動法人
   名古屋NGOセンター


〒453-0021
名古屋市中村区松原町
        1丁目24番地
COMBi本陣N206(北側教室棟)
(旧・市立本陣小学校)

TEL:052-483-6800 
FAX:052-483-6801  
e-mail: info@nangoc.org

ホームページアドレス
   http://www.nangoc.org

開所時間: 火〜土 午後1〜5時

 【名古屋NGOセンターのこれまで】
 1987年 名古屋第三世界センター 発足
 1993年 「アジア市民フォーラム」開催
 1994年 「第3回全国NGOのつどい」開催
 1995年 名古屋NGOセンター 発足
 2000年 特定非営利活動法人格取得
 現在43団体が加盟、100人の個人会員が支援

 【NGO活動を支えてください】
 (1)維持会員/個人会員: 一口 5,000円(年間)
   学生会員: 一口 3,000円(年間)
   団体会員: 一口 30,000円(年間)
   (企業・労働組合・国際交流協会等)
 (2)正会員(NGO会員): 一口 30,000円(年間)
 *但し、年間予算が500万円以下の団体については、一口1万円(年間)にすることができる。
 入会希望の方は下記の郵便振替にて入金し、通信欄に「会員希望」とお書きください。
  口座番号:00860ー5ー90855
  加入者:特定非営利活動法人 名古屋NGOセンター


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