Boramimi Special | / | 2002年9月号特集 |
支え合って、舞台をつくり上げる | |
劇団のメンバーで、設立当初から、『ボーちゃん』の舞台で主役のかばのボーちゃんを務めているのが、鈴木重利さん(20歳)だ。2年前にはボーちゃんとともにフランスに渡り、人形劇フェスティバルに参加した。「ボーちゃんは僕にとって親友。自分と似ているところが好き」。そのとおり、鈴木さんのほのぼのした語り口は、のんびり屋のボーちゃんにぴったりだ。「今でもセリフと動きのタイミングをあわせるのが一番難しい」と言う。 |
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佐藤芳枝さん(22歳)も設立からのメンバーの一人。「最初の頃はもうかちかちだった。今でも緊張はするけど、落ち着いて考えながらやれるようになった。緊張してると見ている人にも伝わってしまうので、自分自身も楽しんでやることを心がけています」。45分の舞台を終えると、車いすを倒して体を横たわらせる。寝ている時間の方が長い日常生活を送っているメンバーにとって、舞台は、全身の力をふりしぼって演じる重労働の場だ。「大変だとか苦労とかは全然感じたことないけど、公演前には体調管理だけは気を使っています」と佐藤さんはプロ意識をのぞかせる。 メンバーと舞台をいっしょにつくり上げているのが、ボランティアだ。鷹野はる奈さんは、今は介護員として働く社会人だが、高校生の時からボランティアとして参加。舞台では車いすをスムーズに操り、タイミングをはかり、場面を動かしていく。「6年間やってきて、お互いに支え合いながら一緒に成長してきたと思う。私もみんなに助けられて生きているんだなと、そう感じます」。そして小道具などの製作にはメンバーのお母さんたちも力を発揮。紙風船はみんなの力で飛んでいる。 |
感動を共感するよろこびを | |
劇団オリジナルの脚本をつくるのは、総指揮者の南先生だ。一つの劇を完成させるには構想から完成まで3年はかかるという。「劇を見て、何か考えられるきっかけを与えることができたらと思う。作品それぞれにわかりやすいメッセージを発信しています」。そして南先生が「紙風船」に託すメッセージは2つある。 「まず一つ目は、自己信頼感のこと。障害のある多くの子が、自分たちは何もできないと自己否定の気持ちになっている。僕たちは社会のお荷物、夢なんてないと言った生徒がいた。そうじゃないんだよ、自分らしく社会に役に立つことを見つけられるんだよ、ということを感じてほしい。そしてもうひとつは感動の共感ということ。みんなで何かやる楽しさ、仲間たちと感動を共にするよろこびを伝えたい」。 その言葉どおり、劇を見た人たちの感想には、『人形と車いすの人と介助する人が一緒になってみんなでやってる姿にガーンときた』といったものが多いそうだ。「それとみんなの明るさに衝撃を受けるみたいですね。堂々とした姿を見て元気になるって言ってくれます」と南先生はうれしそうだ。 紙風船は、8月には2つの公演を抱える。日本各地、世界からも多くの人形劇団が集結する、飯田人形劇フェスティバルは今年で4回目の出演となり、総勢28名で出かける。そして大府市では2度目の公演だ。 ふうわりふうわり、真夏の太陽の光を浴びて、元気なメッセージを運んでいる。 |
人形劇団「紙風船」 |
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