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すっかり地域に溶け込んだ着物のフリーマーケットだが、売れ残った着物をどうするかということが、回を重ねるごとに大きな課題となった。そうしたなかで出てきたアイデアが、子どもたちに着物を着て自分でお抹茶を点ててもらおう、というものだった。早速、岡崎呉服協同組合に腰ひもと帯を提供してもらえるよう掛け合い、教育委員会にも企画書を提出して働きかけた。
「一生の間に着物を一度も着たことがない、抹茶も一度も飲んだことがない。今の日本の子どもは、実際にそんなことになってしまう可能性があるわけですよね。せっかく日本人として生まれてきたのに、悲しいことだと思いませんか?」
そう嘆く浜田さんら紗綾スタッフの努力が実り、一昨年の4月から「日本を体験しよう」というネーミングの出前講座が実現。土曜日や文化祭、敬老の日などに、スタッフが交代で市内の小中学校に出かけていった。その際、全員の子どもたちが着られるようにと持ち寄ったリサイクル着物は100枚。「古着で綺麗なものではないので、子どもたちが嫌がるんじゃないか」というスタッフの心配をよそに、子どもたちの喜びよう、はしゃぎようはすごかった。講座が終わっても、「脱ぎたくない」と駄々をこねる子どももいたほどだ。お抹茶のほうは5人1組のグループで行ったが、こちらも物珍しかったのか、やはり大好評。さらに、講座の中で着物とお茶について解説をする時間も設けられた。「着物を着ているときはハンカチや財布をどこにしまうか?」といったクイズや、着物でのトイレの入り方など、子どもがとっつきやすい話を織り交ぜ、茶道については作法よりもその底流に流れる、おもてなしの心や季節を重んじる心、道具を大切にする心、そして一期一会の意味を伝えた。
子どもたちからは、講座の後たくさんの手紙や感想文が寄せられたという。「たとえば一期一会の大事さがわかったと書いてくれたり、日本文化に興味が持てたと書いてくれたりするんです。子どもは、次世代の日本を担う人たちですからね。やってよかったという手ごたえを感じます」と、その講座で講師を務めた浜田さんは嬉しそうだ。 |
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