特集 みんなの夢を
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−空き店舗を利用したユニークな店をオープン 「雁ぶら物語」−
瑞穂区の雁道(がんみち)商店街に、にぎわいを呼び戻そうと、空き店舗を活用した一風変わったショップとサロンがオープンした。誰もが店のオーナーになれる「雁ぶらショップ」と、日替わりでさまざまな教室や会合が開かれる「雁ぶらサロン」だ。周辺住民でつくる「雁ぶら物語」のメンバーが、商店街の活性化、そして地域の人たちの夢の実現を目指している。
夢をかなえながら、地域に還元する
 月1回以上の実行委員会を重ね、この7月、「雁ぶらショップ」と「雁ぶらサロン」の2店舗が雁道商店街に同時オープンした。「雁ぶらショップ」は元接骨院を改装。店内には約70個のボックスが並ぶ。この小さく区切った棚一つひとつが店舗となり、希望者に月単位で有料で貸し出している。出店者たちは、それぞれのスペースを自由に活用して、陶芸品や手芸品などの手作り品を販売することができる。当番制で店番も任され、「店のオーナーになれるチャンス」と、出店希望者は後を絶たず、店内すべてのボックスがユニークな作品で溢れている。出店者の一人で、布製の手作り小物を販売している吉田志登美さんは、「いろんな人が来てくれて、自分の作品を見たり、買ったりしてくれるのは本当に嬉しい。どのブースも素敵な作品ばかりで、店番の時は、入口のディスプレイを工夫して楽しんでいる」と話す。
 一方、元寿司店を利用した「雁ぶらサロン」は、地域の人たちが、日替わりで教室や会合などに利用できるフリースペースだ。現在は、在宅介護ヘルパーを派遣するNPO法人「すけっとファミリー」による、足湯や俳句などが楽しめるデイサービス的な活動のほか、麻雀、囲碁の同好会に使われている。また毎週金曜日は、希望者が1日だけシェフになってランチを出す、新しい形式の飲食店「ワンデイシェフ」として利用され、登録した「プロではないシェフ」が、趣味を生かして地域の人に料理をふるまっている。このように、地域の人が自由に使える「雁ぶらショップ」と「雁ぶらサロン」は、自分たちの趣味を生かし、夢をかなえることができる場であると同時に、地域の人にも喜びを与えることができる場となっている。毎週金曜日のえんがわでの麻雀同好会。「また明日雁道で会いましょう」と言って皆さん帰っていった。
 そのもうひとつの例が麻雀同好会だ。えんがわと同様、「雁ぶらサロン」でも毎週1回、麻雀同好会が開かれている。この両方で講師を務める中山秀子さんは、お連れ合いを亡くしてふさぎ込みがちだったとき、吉川さんと出会った。「何か得意なことは?」と聞かれ「麻雀なら・・・」と答えたところ、ちょうど麻雀の先生を探していた吉川さんが飛びついた。今では「先生、先生」とみんなに慕われ、毎回30名程の参加者に指導をしながら、麻雀を通しての交流を楽しんでいる。一方参加者も、「麻雀は4人揃わないとできない」と、仲間に会いにやって来る。もともとえんがわの麻雀同好会に参加していた山口さん夫婦は、「雁ぶらサロン」ができてからは両方の麻雀同好会に顔を出すようになった。「親切なメンバーが車で送り迎えをしてくれるので、1日楽しんでくることができる。楽しみの場が増えた」と話す。病気を患って体が不自由になった夫が、テレビを見て生活するだけだった時期に比べ、仲間に会って麻雀を楽しむことで随分元気になったという。「みんなが元気に暮らせる街」―まさに「雁ぶら物語」が目指している地域社会が形になってきている。
 「高齢化の進む雁道商店街で、高齢者も、障害のある人も、若者も、誰もがふらりと来て、1日楽しく過ごせる場所にしたい。そして若者には事業チャンスがある街にしたい」。1軒でも2軒でも、雁道商店街のシャッターが開くようにと、「雁ぶら物語」のメンバーは意気込んでいる。「今後は、雁道の歴史が分かる懐かしい物を集めた店や、リサイクルショップを開きたい。自分たちの夢をかなえながら、元気な街になってほしい。全国のモデルになるのが次の夢です」。雁ぶらの「物語」は、まだまだ始まったばかりだ。

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