特集 戦争を知らない子どもたちに語り続けて25年、平和を尊ぶ心をはぐくむ ホームへ
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終戦から60年の歳月が流れました。 しかし世界のいたるところでは、今も戦禍はやまず、 平和を享受してきた私たちも忍び寄る戦争の影に不安を感じるようになってきました。 そして戦争の記憶の風化を心配する声も年々高まっています。 犬山市で草の根平和活動に取り組む時々輪斉子さんは、自らの体験とともに、 戦争の悲惨さを語り、命の尊さ、平和の大切さを子どもたちに訴え続けています。  
戦争の歴史の事実を伝える
すいとんの会を始めて10年目、時々輪さんのお話を聞いたり戦争の本を読んだ幼児から中学生まで85人の感想文などを集めて、『宇宙平和賞』という文集を自費出版した。 地域の小中学校に送ると、ぜひ講演にきてほしいと依頼がきた。犬山市は昭和60年に平和都市宣言を掲げており、平和教育に熱心に取り組んでいる学校も多い。 東小学校には長年平和学習に協力している。戦争を知らない豊かな時代の子どもたち、どう受け止めているのだろうか。 以前、中学校の朝礼で1時間話をした。いつもはとても騒がしいのが、『あんなに水を打ったように静かな朝礼は初めてだった』と後で先生に聞かされた。 先生や保護者に、『最近子どもが変わった。勉強もするようになったし、給食も残さなくなった』と感謝されることもあり、平和学習の大切さをしみじみ感じていると言う。   講演後、時々輪さんの元には、子どもたちの感想文が届く。「これは私の一番の宝物!」とうれしそうにページをめくる。そこには子どもたちの真剣に向き合う思いが凝縮されている。
「宇宙平和賞」 宇宙平和賞は現在、第三巻になる。創作童話や手作りの絵本で読み聞かせをすることもある。「戦争をテーマにした本をたくさん読んで平和を愛する子どもになってほしい。とくにおすすめしたいのは『はだしのゲン』。日本中の子どもに読んでほしい本です」。
『僕はいやなことがあると生まれてこなければよかったと思うときがあるが、戦争で死にたくなくても死んでしまった人もいる。 今生きていることに感謝して、命を大切にしたい』『戦争をなくすにはこの国とあの国は別の国だと考えるのではなく、 あの国の人も同じ地球に住んでいると思うことが大切』『自分だけがよければ他人はどうでもいいという考えの人が減れば戦争はなくなるかもしれない』『平和のために勉強していきたいと思う。 勉強がいやだなんて言ってられない』・・・などと力強く綴られている。戦争の残酷さに恐怖を感じ、今自分が戦争に巻き込まれたら、と想像する子、命の大切さに気づき、平和を祈る子。 そして戦争を起こさないために何ができるだろう、どうしたら戦争はなくなるだろうと考える子どもたち・・ 「ちゃんと聞いてくれる、反応がある、だから話していかなきゃいけない。戦争の歴史の事実を語ることは私の使命。一生動けなくなるまで続けていきたい。 子どもたちには、今元気で勉強できることのありがたさを実感できるような心の教育が大切」と時々輪さんは力を込める。

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